インターネットでニュースを見ていたら、気になるニュースがありました。それは、大学時代の恩師・入江正之先生の活動を紹介したトピックス。
JR高崎駅周辺には、好立地なのに「狭小」ゆえに利用されなくなった土地が散在しているとのこと。それらの土地を残余空間として放置するのではなく、小住宅として最大限に活用していこうという取り組みでした。地元の工務店と入江先生の研究室が協力してできあがったその住宅は、「タカサキサキガケハウス」と命名されていました。
法的にも予算的にも制約が大きかったことは想像に難くないのですが、そのなかでも、下の写真のような陶片モザイクタイルが道路際になされていました。「住宅の基本である『家』の温かいイメージを発信したかった。そのため最も目立つ道路側の壁に施工した」というのは、入江先生の弁。研究室の学生が何度も現地に訪れモザイクタイルを施工したとのこと。
入江先生は、ガウディに関する一連の研究の第一人者です。当然、建築家としての設計活動のなかにも、ガウディ研究を通して捉まえられた思想が反映されています。陶片モザイクタイルの表現は、ガウディ作品に対して、さらには入江先生の師である今井兼次へのオマージュでもあるのでしょう。
僕は大学時代に、入江先生のもとでガウディに関する卒業論文を書きました。「アントニ・ガウディの建築作品における幾何学について」という少々堅苦しい題名のついた論文でした。その研究の一環として、ある研究所のエントランスホールに、実作として残す機会もいただくことができました。
来る日も来る日も石膏まみれになりながら、エントランスホールの天井に取り付く照明器具を自ら製作したことは、いろいろな意味で現在の僕の設計に対する考え方に影響しています。