現在進行している住宅の計画のことを書きたいと思います。
東山の家。
はじまりは、ある日届いた一通のメールでした。
施主のOさんは、たまたま目にしたこのブログを気に留めてくださり、ブログのなかで書き綴ってきたいろいろなことを通して、ご自宅の計画の夢をこの若い建築家に託そう、いっしょに楽しもうと思ってくださったそうです。それは僕にとって、これ以上ないほどありがたく嬉しい出会いでした。こうして、「東山の家」の計画は始まったのでした。
Oさんは、茶人でもあります。そう、この家は、茶室のある住宅なのです。そして、鉄筋コンクリート造3階建て。通常の茶室の造り方とは大きく異なりますし、むしろ、茶室の作法を大事にしながらも、新しいやり方で空間をつくっていかねばなりません。僕は茶室や数寄屋建築の専門家ではないけれども、興味をもってずっと見てきました。同時に、古今東西の建築や庭園も興味をもって接してきました。その中で感じてきたいろいろなことを、この住宅の中に静かに沈めること。それが、必要なことなのだと思います。
茶室だけでなく、住居部分にも、茶人の住まいとしてふさわしい雰囲気をつくりだしていきたいと思いました。
陰影の深い、秘めやかで、奥行きのある場所。
そんなことを思い描くとき、桂離宮が、修学院離宮が、吉村順三やルイス・バラガンの住宅が、胸中をよぎっていきます。それらを咀嚼しながら、そっとこの住宅のなかに沈めていくことが、僕にとって設計する上での目標にもなっています。
少しずつ、東山の家について、紹介していきたいと思います。