西東京で建てている住宅「東伏見のコートハウス」の工事が、いよいよ大詰めを迎えています。外部の足場も外され、窓の少ない、大きな左官塗の壁が姿を現しました。
この家は、中庭を中心に空間ができあがっています。光は中庭から室内に取り込まれます。中庭を通した柔らかく穏やかな雰囲気の光は、とても居心地のよいものになりました。
周囲の隣家に取り囲まれたような、約30坪の南北に細長い敷地。窓をどのように開けても、すぐ目の前に隣家の壁や窓にあたってしまいそうです。でも、コートハウス、つまり中庭型の住宅であれば、中庭越しに自分の家の窓が見えるおもしろさもありますし、隣家ともワンクッションおかれたような感じで、安心です。
この中庭、面積としてはさして広いわけではありません。でも、この家に住む家族のためだけの、秘めやかで愛らしい庭にしたいと思いました。大きな壁沿いの長いアプローチを通り、玄関を開けると・・・明るい中庭がパッと広がる。そんなイメージをもちました。家の外観は、そんなアプローチの雰囲気と植栽の背景になるように、極めてシンプルで秘めやかなものにしたいと思って形がきまっていきました。
工事中、これから塗ろうとするこの大きな壁面を目の当たりにし、左官屋さんは苦笑いを隠せない様子でしたが、下地処理から始まり、丁寧に塗ってくださいました。白く、静謐な壁。そんな雰囲気がでたことを、嬉しく思っています。
この住宅では、中庭を中心としながらも不定形なプランになっていて、ポケットのようなコーナー、天井の高いダイニングなどがひと続きにつながっています。洗面室やバスルームも中庭に関係づけられ、大きな意味では、ひとつながりのワンルームの空間のなかに、いろいろなスペースがちりばめられている、というような家になりました。
正面がどこなのか、よくわからない家。
内と外がつながったような家。
歩き回るのが楽しい家。
終わりがなく続いていく感じ。それは屋上へとつながり、テラスからは武蔵野の林につながっていきます。
市街地のなかの小さな敷地に建つ、このような住宅のあり方が「住環境」という言葉で表されるような、おおらかなものになるといいなあ、と思っています。