桜の樹の傍の教会

2013-04-06 16:44:04 | 進行中プロジェクト

進行中の現場への往復も、気持ちの良い季節になってきました。

南馬込の2世帯住宅では、棟上げを終え、アルミサッシは外壁の下地の設置も進みました。壁で囲まれた場所、外へ開かれた場所が徐々にはっきりとわかるようになり、現場での打合せやチェックと同時に、できあがりつつある空間に身を置く楽しみもでてきました。

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写真は3階のリビングダイニングに面したロッジアの空間。屋根のある屋外テラスになります。北側に位置するのですが、天窓がつけられているのでとても明るい空間になりました。周囲を宅地に囲まれた3階ですから、風景を眺めるためのスペースではないのですが、その分、テーブルとイスを置いて、ほっと息をつける場所になりそうです。

成城の2世帯住宅も地鎮祭を迎え、いよいよ工事が始まります。少し前の話になりますが、桜満開の地鎮祭の日、ある教会に立ち寄りました。

カトリック成城教会。この教会は今井兼次という建築家が設計し、昭和30年に完成しました。周りの建物がどんどんと変わっていく中で、この教会はほぼその姿を変えることなく、ずっとあり続けたことになります。

最初から植わっていたのか、後から植えられたのかはわかりませんが、この教会の傍に寄り添うようにして、あるいは教会が寄り添うようにして、なのか、大きな桜の樹があります。この日、桜は見事な満開でした。

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幾度となくこの教会を訪れましたが、いつ来ても、このままこうあり続けてほしいと思える何かが、この教会にはあるように思います。単純な切妻の三角の瓦屋根に、鐘楼が寄り添ったかたち。縦に細長く大きな窓。この窓は木でできていて、ペンキがとっぷりと塗り重ねられています。古いガラスは歪んで中は見えませんが、ぼんやりと映る照明の気配を見ていると、心の奥底にぽっと明かりが灯るような。

宗教的な含意の込められた小さな図像が散りばめられた、やさしい教会。こんな単純で当たりまえのかたちの教会は、もし現代に設計コンペになったら、決して選ばれることはないんだろうな、と思います。だからこそ逆に、妙に愛おしく思えます。そう、コンペだったら、この教会は絶対に生まれないだろうし、チームプレーでディスカッションを重ねても、このようなあり方には辿り着かないでしょう。今井兼次という一人の個性が、個性的な設計技術をひけらかそうというよりも、建物の主題と敷地に思いを馳せて、一生懸命考えてつくったからこそできあがった建物であり空間なのだろうと思います。

さして特別ではなく、当たりまえと言えば当たりまえ。でありながら、とても深遠。もしかしたら、今、もっとも重要なことなのではないでしょうか。

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