静岡県富士市で着工した住宅が、上棟をむかえました。
敷地は小さな用水路に面していて、印象的な緑地が庭先に広がっています。静かで奥まった敷地の雰囲気を活かすことについて考えていると、シンプルな間取りのなかに、まわりの環境を印象的に切り取るような、額縁のような窓のあり方がイメージされてきました。そのことを単純にシンプルに形に置き換えたい、そんな風に思いながらこの住宅を設計してきました。
いわゆる形式通りの玄関がない、シンプルな間取りです。玄関はないけれども、そのかわりに土間スペースがつくられています。小屋組みがあらわしになった、ざっくりとした雰囲気の空間。ガラス越しに、向かいの緑が気持ちよく眺められることを体感して、設計者としては悦に入る瞬間でした(笑)
上棟にあたり、お施主さんの計らいで投げ餅が行われました。地域によって作法も様々なのだと思いますが、富士では、竹で弓をつくり棟にくくりつけて、「今日、投げ餅をやるよ~!」という合図にするのだそうです。竹弓をつくる職人さんたちも、上棟作業を終えてちょっとひと安心、という感じだったのでしょうか、和気あいあいとした雰囲気でした。
投げ餅の定刻になり2階にあがって見ていると、今か今かと待ち構える子供たちをはじめ、多くの人たちが集まってきます。大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮なイベントなんですね。
ぼくも餅やお菓子を投げるのに夢中になってしまい(笑)、餅が宙を舞う華やかなシーンの写真を取り損ねてしまいましたが(泣)、思い出深い一日となりました。家を建てるというのは、地域のなかにはいって人と人とがつながること。地域のみなさんへのご挨拶もかねて、このような行事が文化としてずっと残っていってほしいですね。