そこには、それがなくてはならない。そんな気分というのがあると思います。敷地にあった欅(けやき)の古木を、事情があって切り倒さざるを得なかったのだけれど、その欅をつかって家具をつくる。製材したなかでもとりわけ良い部分の板を選んでダイニングテーブルをつくります。おのずとそれは生活の中心となるし、そのような雰囲気を漂わせないといけないと思います。そんな風にして、この家の設計の骨子は決められていきました。
だいぶ期間がかかったけれども、ようやく工事は大詰め。まだ主役のダイニングテーブルは、製作してくれた家具屋さんの倉庫のなかで、今か今かと出番をひっそりと待っているはず。空間のなかでダイニングテーブルと調和するように考えた各部のディテールが、少しずつ仕上げられてきました。欅の古木以外にも、旧家に残る和室の透かし彫りや、床板などが少しずつ散りばめられるようにして新築のなかに配され、新しいのだけれども、どこか以前につながっているような、そんな雰囲気が宿ることを目指しています。