住宅の設計が始まると、いくつもの模型を作りながら、あれこれとカタチを考えます。
屋根のかけ方や傾きが変わるだけでも、まったく違う雰囲気になるから不思議なものです。
模型用の白い厚紙を使って作るのですが、白いシンプルな表情を思い浮かべているわけではありません。
模型をいじりながら脳裏に明滅するのは、壁の素材感であったり、そこに映り込む樹木の影であったり、足元に咲く草花であったり。室内に入りこんでくる光であったり。
昨晩、「世界はほしいモノにあふれてる」で見たようなチーズをこのダイニングで食べたら美味しいだろうか、とか。
実のところ、家のデザインといいながら、独創的な姿カタチを追い求めているわけではありません。
模型を覗きながら、その場に求めたい風情を徐々にイメージの中でつかんでいきます。
そのようにしてできあがった家を写真に撮るときには、家全体の姿を雄々しく撮るのではなく、ついつい いま目の前にあるシーンを慈しむようにしながらファインダーを覗いてしまいます。