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冬から続いてきた「山中湖の家」の現場通いも終盤になってきました。
真っ白の銀世界から始まって、新緑そして梅雨時期へ。
現場での打合せを終えて、ちょっとした安堵感とともに夕方の湖畔に足を運ぶのが習慣になりました。
このあたりはカフェやお店も早い時間に店じまいをしてしまうので、行くところが無いというのもありますが(笑)
でも、この夕方の光景が、ぼくにとっては最高の現場後のご褒美(?)なのです。
近隣の河口湖に比べると観光客もとても少ないのですが、夕方ともなると、ほぼ人影がなくなります。
とぷんとぷん。
湖の水面が揺れる音と、鴨がすいすいと波紋を残しながら泳いでいくのを眺めながら、満たされた気持ちになります。
作家の須賀敦子さんが著作「時のかけらたち」のなかで、夕方のヴェネツィアで感じ取った心情にちょっと重ね合わせながら、少しばかりの時間を過ごすのが、とても好きなのです。
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夕方の光景は特別だな、とよく思います。
陽の光が次第に弱まりながら、でも横から事物を照らします。
照らされた事物は、光を受ける反対側に陰影を色濃く宿します。
そうすると、目の前にある事物が、真昼間には見せなかったような趣きを放ち始めるのです。
存在の「しわ」というのか、歩んできた時間や記憶というのか。
夕方には、山中湖畔の木々も、そんな趣きを宿して。