「片倉の家」ができあがって半年ほど。施主のIさんから食事会にお招きいただきました。
施工を担当くださった栄港建設の関係者、そして大工さん親子と久々の再会となりました。
みなさん、現場で見かけるのとは異なり正装で、ちょっと不思議な雰囲気です。
八畳間に集い、お茶を一服いただきました。
建て替える以前から残っていた茶室を引き継ぐように、新しい和室にも炉が切られました。和室は決まりがあるようでいながら自由なもの。
敬愛する建築家・村野藤吾の言葉を思い起こしながら、重くなく、明るく、それでいて趣のある雰囲気にしたいと思って、造作の取捨選択を吟味して設計しました。
それを形にしてくださった棟梁親子の仕事は極めて厳密なものでした。
工事監督や大工さんと現場で交わした、ああだこうだの話が、もうずっと昔のことのよう。穏やかな陽光で明るく照らされた室内の、平穏な時間。
すべてはこのような時間のためにつくったものでした。
棟梁の講釈は尽きるところがない(笑)のですが、それを聞きながら、棟梁の皺に刻まれた何十年というキャリアに思いを馳せずにはいられませんでした。
また、仕事をお願いする機会に恵まれるのだろうか。
技は見せつけるのではなくて、技は消すもの。そのようなことが、素朴でありながら洗練を感じさせるものに近づく奥義なのかもしれません。
少しでもそのようなものに近づけたかどうか。
いずれにしても、気持ちよく時間を過ごすことができました。これから何年、何十年と、変わらず平穏な雰囲気がこの家に宿り続けることが予感できたので、なんだかじいんと嬉しくなりました。
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