東京・新橋に、堀商店という老舗の建築金物メーカーがあります。そこで製造されるドアノブや錠前などは堅牢で美しいことに定評があります。タイムスリップしたようなレトロな社屋に入ると、真鍮などを使った味わい深い製品がずらりと並びます。
建築やインテリアの写真は、全体を撮ることが多いので、ドアノブや錠前などが写真の中心になることはあまりありません。しかし実際に日々の生活のなかでは何回も何回も繰り返し使われる、最も働き者の部分です。昔、師匠に「建築の造作は、繰り返しの使用に耐える堅牢さをいかに保持できるかが大切だ。狂いの少ない金物を選ぶ目も、設計者にとっては重要な技能だ」と言われたことがありました。
僕も独立以後、堀商店の金物には随分とお世話になっていますが、その製品の他に気に入っているのが、同社発行のカレンダー。手元には独立した2005年から2007年まで3年分があります。毎年、国別の鉄細工や錠前を、風合いある写真に収めています。
ポルトガル・リスボン、ベルギー・ドイツ、そして今年はモロッコ。
パラパラとカレンダーをめくりながら、細部に宿るいろいろな国の文化に思いを馳せるのも、仕事の合間のちょっとした楽しみになっています。
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