18年目の家

2020-02-14 22:04:58 | 日々


ぼくが村田靖夫さんの設計アトリエに勤めて、初めて担当した住宅に、メンテナンスで訪問しました。
もうできあがって18年目になります。
この住宅に来ると、住宅設計のイロハを叩き込まれた当時のことがいろいろと思い出され、ちょっと緊張感もはしります。



ゆったりとした敷地に広がるコートハウス。中庭のある住宅です。
村田さんが得意とした設計手法でした。
中庭は緑が茂り、それに向きあって大きなガラス窓があります。軒が深く出て、室内と中庭が一体的につながる空間です。
大きな窓があるから明るいのだけれど、緑陰を通した自然光は、紗がかかった光となって室内にじんわりと満ちていきます。
穏やかさと落ち着き。そして、すべての寸法体系がきちんとコントロールされた緊張感のある佇まい。
こんな風情が、村田さんの手腕だったのだと、今あらためて思います。



キッチンからの勝手口から外に出ると、キッチンガーデンがあります。
通風をとるための穴あきブロックの壁が立ち、それが目隠しにもなっているプライベートな庭です。当初はバラ園になっていました。
緑とともにある暮らしをこよなく愛した村田さんが、これはうまくいったと気に入っていた場所でした。

当時は、村田さんの先導に必死になって喰らいついていくだけだったけれど、こうして長い時間を経て見てみると、そのひとつひとつの厳しさが、暮らしを楽しむという目的に向けられていたんだな、とあらためて感じます。
村田さんはもう亡くなってしまったけれど、ここに来ると、やはり住宅設計の大切な原点を思いかえすことができます。
だからこれからも、メンテナンスなどを通してこの住宅を守っていきたいと思うのです。


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