それまで建っていた古い家には、芝生を囲む主庭がありました。植栽が大好きだった祖父母に愛でられた花木は、季節感をもたらし生活を楽しませてくれたものでした。
新しい家の計画は、その庭を残すように配置が決定されました。
追憶の庭。
たんなる庭も、そんな詩的なイメージがともなえば、一層かけがえのないものになるでしょう。大切なものを慈しむように残すこと。そのために、駐車場の灰色の壁と、主屋の白い壁で、庭を囲うようにしました。おかげでその庭は、どこかの小さな教会前の広場のような静けさを得ました。灰色と白色のふたつの壁には、老木の影が映り込み、穏やかな木陰をつくりだしています。
こうしてできた庭は、新しい家にとっての「前庭」となり、その様子は道路からも眺めることができます。道行く人にとって「街並みの奥行き」を感ぜられるものになれればよいと願って、つくったものでした。
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