今宵はしとしとと雨が降ります。
雨が似合う場所を思い返すとき、ふと思い出されるのが、ここ。
所沢聖地霊園 礼拝堂と納骨堂です。
もう50年ほど昔の建物で、開設当時は武蔵野の雑木がずうっと続いている環境だったそうです。
設計を担当した建築家の池原義郎先生に、ぼくは大学生時代に教わりました。
そのときの講義のノートを見返すと、この礼拝堂の主題が、デザインされた姿かたちそのものにあるのではなく、それらがもたらす余韻や暗示にこそ主題が求められていたことがわかります。
空間が森につながる。無限の奥として森をとらえたい。実在しない深さを、実在するように感じさせたい。
写真の手前に映る水盤は、心に静けさをもたらすもの。
お彼岸の昼に、礼拝堂の天窓から祭壇に光が落ちるように屋根の角度を決めた。
それらの作為ひとつひとつがもたらすであろう心象的な効果を、学生時代からずっと味わい考え続けてきました。
デザインをするということは、姿かたちの良しあしだけを指すのではない。
そのことをずっと胸に留めてぼくは仕事をしてきました。そのきっかけは池原先生の講義だったと思います。
雨に煙る光景の記憶とともにある、ぼくにとって原風景のような場所です。
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