リストラと能力主義, 森永卓郎, 講談社現代新書 1489, 2000年
・テレビ等のメディアへの露出が多く、顔を見知った著者なので、どんな本を書くのかと、著者への興味のみで手に取った本。いわゆる『ビジネス書』に分類されるような内容で、普段あまり馴染みのない私でもすんなりと読めました。文章が簡潔でわかりやすい。
・言葉のみが先行し、誤解されて世に広まった『リストラ』と『能力主義』について、その本来の意味を問い直し、あるべき姿を提示する。
・「人件費削減が避けられない場合は、賃金調整でやればよいのである。」p.16
・「いま行われているリストラは、従業員をロープでぐるぐる巻きにして海に放り込み、「さあ、自分で泳ぎなさい」と言っているのに等しいのである。」p.29
・「つまり、大規模なリストラを行うと、短期的には早期退職優遇金などのリストラのコストがかさむため、会社の利益は増えない。ところが、中長期的にも、有能な人材の流出や従業員のモラールの低下によって、業績は改善しないのだ。」p.34
・「いちばんよい「リストラ」の方法は、従業員の雇用は守るという大前提の下で、賃金の能力主義化を強化することによって人件費を変動費化し、短期の経営安定を図ると同時に、従業員の個人優先主義を強化することによって知的創造性を確保し、中長期の経営基盤を固めることなのである。」p.35
・「日本的雇用慣行の特徴は、一般に終身雇用、年功序列処遇、企業別労働組合の三つであるというわれる。」p.40
・「つまり、企業内平等主義としての年功序列制と企業優先主義としての終身雇用制、この二つが日本的雇用慣行の最大の特徴なのである。」p.46
・「こうした背景を踏まえると、年功序列制の下で強力な所得再分配が行われ、終身雇用制の下で中央集権的な人材資源の配分が行われるという仕組みは、社会主義のシステムと非常によく似ていることがわかる。」p.48
・「こうして、会社のなかだけでなく、ふだんの生活まで含めて会社のコントロールが行われ、従業員の規格化が完成していくというのが、日本的雇用システムの正体なのである。」p.57
・「恐怖によって、国民の反乱を弾圧する。その政策といま日本の企業が行っているリストラは同じ性格を持っている。」p.71
・「ところが、どんな部門のどんな職種でも、客観的に処遇の格差をつけるのは、実は簡単なことだ。評価に市場原理を採り入れればよいのである。」p.74
・「集団を統治するには二つの方法がある。一つは忠誠心による統治であり、もう一つはアイデンティティによる統治である。」p.116
・「人間は、他人を支配したいという欲求と同時に、権力に支配されたいという欲求を持っている。人間は命令されたり、支配されたい生き物なのである。」p.118
・「企業理念とは企業にとっての憲法のようなものなのである。」p.121
・「一見矛盾する個人の尊重とチームワークを併存させる。これこそがアングロサクソン文化の真骨頂であるプルーラリズム(多元主義)なのである。」p.122
・「知的創造型の企業で経営者がやらなければならないことは、リーダーシップを発揮して自らの判断で会社を引っ張っていくことではない。思い切った権限委譲をしたうえで、一人ひとりの社員が一つの目標を共有できるように、手を替え品を替えて常に企業理念を普及していくことである。」p.123
・「以上のビジョナリーカンパニーが持つ三つの特徴、すなわち思い切った権限委譲と企業理念の維持、そして進化を促す仕掛け作りを行うという間接統治の仕組みは、二つの企業行動に結びつく。利益至上主義の排除と従業員を大切にする姿勢である。」p.134
・「ビジョナリーカンパニー型の経営システムを導入すれば、これまでの権威は失墜し、その権威をかざして会社を支配してきた権力者たちは失脚してしまう。だから多くの日本企業は、本物の優良企業の仕組みを採り入れることができないのである。」p.135
・「リストラと能力主義化が過ったかたちで行われはじめたいま、企業優先ではなく個人優先の、「自由と自己責任」の雇用システムをどう構築するか。」p.136
・「しかも部長や働かない役員のリストラには、もれなく副産物の効果が付いてくる。それは、彼らの存在をなくすことによって意思決定のスピードアップが実現し、それが新しい技術開発を発展させ、企業が活性化するということである。」p.152
・「会社の生産性を上げるためには、人事部は外に出してしまったほうがよいのは明らかだ。問題は、人事部という猫の首に誰が鈴をつけるのかということだけなのである。」p.159
・「ただ、700万円ずつ二年間稼いだときの税金は二年間で80万円なのに、1400万円を一年間で稼ぐと220万円も税金を納めなければいけない。つまり、集中して自己投資をしようとすると、とんでもない税金を払わなくてはいけないというのがいまの税制なんです」p.163
・「でも、経済白書が書いたように、1965年以降に生れた世代は、払った保険料も戻ってこないんです。それだったら、差額分を給料でもらって自分で積み立てたほうがましでしょう。厚生年金の保険料率はこれからもどんどん上がっていくし、これからますます国民年金のほうが有利になっていきますよ」p.163
・「そこで提案したいのが「まだら定年制」である。 まだら定年制は、たとえば45歳から50歳までは「月曜日だけ定年」、51歳から55歳までは「月、水だけ定年」、56歳から60歳までは「月、水、金だけ定年」という具合に勤務日を段階的に減らしていく。」p.184
・「だからいまの段階でサラリーマン自らリストラに備えるためのいちばんよい方法は、副業を持つことだと思う。」p.186
・「しかも、創造性というのは好きなことをしているときにしか生まれない。人間の脳の構造がそうなっているのである。」p.190
・テレビ等のメディアへの露出が多く、顔を見知った著者なので、どんな本を書くのかと、著者への興味のみで手に取った本。いわゆる『ビジネス書』に分類されるような内容で、普段あまり馴染みのない私でもすんなりと読めました。文章が簡潔でわかりやすい。
・言葉のみが先行し、誤解されて世に広まった『リストラ』と『能力主義』について、その本来の意味を問い直し、あるべき姿を提示する。
・「人件費削減が避けられない場合は、賃金調整でやればよいのである。」p.16
・「いま行われているリストラは、従業員をロープでぐるぐる巻きにして海に放り込み、「さあ、自分で泳ぎなさい」と言っているのに等しいのである。」p.29
・「つまり、大規模なリストラを行うと、短期的には早期退職優遇金などのリストラのコストがかさむため、会社の利益は増えない。ところが、中長期的にも、有能な人材の流出や従業員のモラールの低下によって、業績は改善しないのだ。」p.34
・「いちばんよい「リストラ」の方法は、従業員の雇用は守るという大前提の下で、賃金の能力主義化を強化することによって人件費を変動費化し、短期の経営安定を図ると同時に、従業員の個人優先主義を強化することによって知的創造性を確保し、中長期の経営基盤を固めることなのである。」p.35
・「日本的雇用慣行の特徴は、一般に終身雇用、年功序列処遇、企業別労働組合の三つであるというわれる。」p.40
・「つまり、企業内平等主義としての年功序列制と企業優先主義としての終身雇用制、この二つが日本的雇用慣行の最大の特徴なのである。」p.46
・「こうした背景を踏まえると、年功序列制の下で強力な所得再分配が行われ、終身雇用制の下で中央集権的な人材資源の配分が行われるという仕組みは、社会主義のシステムと非常によく似ていることがわかる。」p.48
・「こうして、会社のなかだけでなく、ふだんの生活まで含めて会社のコントロールが行われ、従業員の規格化が完成していくというのが、日本的雇用システムの正体なのである。」p.57
・「恐怖によって、国民の反乱を弾圧する。その政策といま日本の企業が行っているリストラは同じ性格を持っている。」p.71
・「ところが、どんな部門のどんな職種でも、客観的に処遇の格差をつけるのは、実は簡単なことだ。評価に市場原理を採り入れればよいのである。」p.74
・「集団を統治するには二つの方法がある。一つは忠誠心による統治であり、もう一つはアイデンティティによる統治である。」p.116
・「人間は、他人を支配したいという欲求と同時に、権力に支配されたいという欲求を持っている。人間は命令されたり、支配されたい生き物なのである。」p.118
・「企業理念とは企業にとっての憲法のようなものなのである。」p.121
・「一見矛盾する個人の尊重とチームワークを併存させる。これこそがアングロサクソン文化の真骨頂であるプルーラリズム(多元主義)なのである。」p.122
・「知的創造型の企業で経営者がやらなければならないことは、リーダーシップを発揮して自らの判断で会社を引っ張っていくことではない。思い切った権限委譲をしたうえで、一人ひとりの社員が一つの目標を共有できるように、手を替え品を替えて常に企業理念を普及していくことである。」p.123
・「以上のビジョナリーカンパニーが持つ三つの特徴、すなわち思い切った権限委譲と企業理念の維持、そして進化を促す仕掛け作りを行うという間接統治の仕組みは、二つの企業行動に結びつく。利益至上主義の排除と従業員を大切にする姿勢である。」p.134
・「ビジョナリーカンパニー型の経営システムを導入すれば、これまでの権威は失墜し、その権威をかざして会社を支配してきた権力者たちは失脚してしまう。だから多くの日本企業は、本物の優良企業の仕組みを採り入れることができないのである。」p.135
・「リストラと能力主義化が過ったかたちで行われはじめたいま、企業優先ではなく個人優先の、「自由と自己責任」の雇用システムをどう構築するか。」p.136
・「しかも部長や働かない役員のリストラには、もれなく副産物の効果が付いてくる。それは、彼らの存在をなくすことによって意思決定のスピードアップが実現し、それが新しい技術開発を発展させ、企業が活性化するということである。」p.152
・「会社の生産性を上げるためには、人事部は外に出してしまったほうがよいのは明らかだ。問題は、人事部という猫の首に誰が鈴をつけるのかということだけなのである。」p.159
・「ただ、700万円ずつ二年間稼いだときの税金は二年間で80万円なのに、1400万円を一年間で稼ぐと220万円も税金を納めなければいけない。つまり、集中して自己投資をしようとすると、とんでもない税金を払わなくてはいけないというのがいまの税制なんです」p.163
・「でも、経済白書が書いたように、1965年以降に生れた世代は、払った保険料も戻ってこないんです。それだったら、差額分を給料でもらって自分で積み立てたほうがましでしょう。厚生年金の保険料率はこれからもどんどん上がっていくし、これからますます国民年金のほうが有利になっていきますよ」p.163
・「そこで提案したいのが「まだら定年制」である。 まだら定年制は、たとえば45歳から50歳までは「月曜日だけ定年」、51歳から55歳までは「月、水だけ定年」、56歳から60歳までは「月、水、金だけ定年」という具合に勤務日を段階的に減らしていく。」p.184
・「だからいまの段階でサラリーマン自らリストラに備えるためのいちばんよい方法は、副業を持つことだと思う。」p.186
・「しかも、創造性というのは好きなことをしているときにしか生まれない。人間の脳の構造がそうなっているのである。」p.190