タイムマシンの作り方 光速突破は難しくない!, ニック・ハーバート (訳)小隅黎 高林慧子, 講談社ブルーバックス B-798, 1989年
(FASTER THAN LIGHT by Nick Herbert, 1988)
・題名よりトンデモ本的内容を期待しましたが、いたってマジメな内容でした。超光速(=タイムマシン実現)の可能性を、過去考案された様々な理論を基に考察する。難易度はやや高めで、しばしばついていけなくなる箇所あり。著者オリジナルの理論が無いところが残念。
・今のところ未来から来ている人は見たことないからタイムマシンなど不可能、などと思ったりもしますが、ちゃんとそれをかわす理論もあるようです。タイムマシン完成後の時間は行き来自由だがそれ以前は不可能、とか、宇宙は複数存在し我々がいる宇宙はたまたま未来人が立ち寄っていない宇宙である、とか。
・「時間というものが、三次元の空間につぐ第四の次元であるという考え方は、新しい物理学の基礎となっている。ではなぜ人間は、空間を動くのと同じように、時間の中を行ったり来たりできないのか? 空間では前後左右どちらへでも行けるのに、時間だけは一方通行である。」p.5
・「彼(チャック・イーガー)は自伝『イーガー』の中で回想している。「さんざん心配して音速を突破してみると、あとはまるで舗装された高速道路をつっ走っているようなものだった」」p.14
・「地球上でもっとも速く動いている赤道では、地球の自転がひき起こす遠心力のために、北極や南極にいるときより体重が実際に60~80グラム減る。」p.37
・「物理学は主としてそういうパターン――くいちがう観測結果を総合して誰にとっても同一の体系を形成する方法――をさがす学問である。」p.39
・「タイムトラベルの物理学のために、アインシュタインの相対性理論は、動機(ミンコフスキーの時空には過去が永遠に存在する)と手段(超光速関係および相対論的同時性のずれ)を両方とも提供してくれた。」p.60
・「相対性理論の法則がある以上、どんな手段で加速したとしても、期待はずれのおそい速度しか出せない。(中略)極端な話、ほぼ光の速さで航行するロケットから光線を発射しても、光は光速の二倍ではなく、ただ光速で走るだけだ。ここでは相対性理論は、1+1=1という奇妙な結論を出すわけである。」p.64
・「宇宙船を光速の90パーセントにまで加速するには、少なくとも宇宙船の静止質量にひとしいだけの量のエネルギーが必要になる。フォルクスワーゲンの小型車をこの速さで走らせるためには、ほぼ1トンの物質をエネルギーに変換しなければならない。これは、アメリカ合衆国の年間エネルギー消費量にひとしい。」p.66
・「不思議な偶然の一致だが、地球の重力加速度・1Gと一年間の秒数との積は、だいたい光の速さにひとしい。」p.67
・「もっとも、大陸横断の飛行機旅行くらいでは、手っ取り早い長寿法とはならない。たった一秒寿命を延ばすために、世界一周旅行(東まわり)を2500万回もしなければならないからだ。」p.70
・「星々が天球を一昼夜に一回まわっているように見えても、実際には、星が光よりも早く運動しているわけではない。」p.76
・「角運動量がその質量を越えたために崩壊したような物体を、超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)と呼んでもいいだろう。SEKOは裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、そこでは、時空全体がひどく悪性の領域になっている。」p.167
・「量子力学を利用して超光速通信をしようという計画は、いわゆる "量子結合(カンタム・コネクション)" に集中している。」p.211
・「つまり、間違いのない記録と、時間を逆行して信号を送れる能力さえあれば、過去へ行ったのと同じことができる。」p.223
・「EPR実験によって、超光速通信の研究は大きく一歩前進した。タキオンを生成するとか、時空をねじって閉じた時間の環をつくるというような異様な計画を立てる必要はない。読者諸君、信号を光より速く送信するためには、光子の偏光を個別に測定する方法を発見すればいいのだ!」p.232
・「今日、物理学の間隙をぬって超光速通信機をさがし求めるのは、19世紀における永久機関の探究と似たところがある。」p.235
・「量子論で最大の未解決問題と言えば、「測定とは何か?」である。波動的な可能性を粒子的な現実に変えることができる "観測" を行うとき、いったい何が起こるのか? この基本的問題については半世紀以上も議論されてきたが、まだ答えが出ていない。」p.249
・「こうしたいくつかの抜け穴にひそむ超光速の可能性に対する、筆者の相対的信頼度を表す指標として、仮に1000万ドルを超光速研究に投資するとしたら、量子結合と一般相対性理論には同じ金額――たぶん400万ドルずつ――を、そして100万ドルを先進波の研究に充てたい。残りの100万ドルはその他全般の、実用的なタイムトラベル機構としてはあまり見込みがなさそうなものにまわすとしよう。」p.250
・「ニュートンの決定論的法則にしたがって特殊相対性理論が描いたひとつづきの宇宙は、過去と未来が永遠に定まり、博物館のように静的で、その全歴史は初めから終わりまで琥珀の中に固められたかのように不動のものである。」p.257
・「簡単に言えば、量子論は、この世界が可能性の集まりであるとし、測定を行うことで、その可能性の一つが現実になるというのだ。」p.259
(FASTER THAN LIGHT by Nick Herbert, 1988)
・題名よりトンデモ本的内容を期待しましたが、いたってマジメな内容でした。超光速(=タイムマシン実現)の可能性を、過去考案された様々な理論を基に考察する。難易度はやや高めで、しばしばついていけなくなる箇所あり。著者オリジナルの理論が無いところが残念。
・今のところ未来から来ている人は見たことないからタイムマシンなど不可能、などと思ったりもしますが、ちゃんとそれをかわす理論もあるようです。タイムマシン完成後の時間は行き来自由だがそれ以前は不可能、とか、宇宙は複数存在し我々がいる宇宙はたまたま未来人が立ち寄っていない宇宙である、とか。
・「時間というものが、三次元の空間につぐ第四の次元であるという考え方は、新しい物理学の基礎となっている。ではなぜ人間は、空間を動くのと同じように、時間の中を行ったり来たりできないのか? 空間では前後左右どちらへでも行けるのに、時間だけは一方通行である。」p.5
・「彼(チャック・イーガー)は自伝『イーガー』の中で回想している。「さんざん心配して音速を突破してみると、あとはまるで舗装された高速道路をつっ走っているようなものだった」」p.14
・「地球上でもっとも速く動いている赤道では、地球の自転がひき起こす遠心力のために、北極や南極にいるときより体重が実際に60~80グラム減る。」p.37
・「物理学は主としてそういうパターン――くいちがう観測結果を総合して誰にとっても同一の体系を形成する方法――をさがす学問である。」p.39
・「タイムトラベルの物理学のために、アインシュタインの相対性理論は、動機(ミンコフスキーの時空には過去が永遠に存在する)と手段(超光速関係および相対論的同時性のずれ)を両方とも提供してくれた。」p.60
・「相対性理論の法則がある以上、どんな手段で加速したとしても、期待はずれのおそい速度しか出せない。(中略)極端な話、ほぼ光の速さで航行するロケットから光線を発射しても、光は光速の二倍ではなく、ただ光速で走るだけだ。ここでは相対性理論は、1+1=1という奇妙な結論を出すわけである。」p.64
・「宇宙船を光速の90パーセントにまで加速するには、少なくとも宇宙船の静止質量にひとしいだけの量のエネルギーが必要になる。フォルクスワーゲンの小型車をこの速さで走らせるためには、ほぼ1トンの物質をエネルギーに変換しなければならない。これは、アメリカ合衆国の年間エネルギー消費量にひとしい。」p.66
・「不思議な偶然の一致だが、地球の重力加速度・1Gと一年間の秒数との積は、だいたい光の速さにひとしい。」p.67
・「もっとも、大陸横断の飛行機旅行くらいでは、手っ取り早い長寿法とはならない。たった一秒寿命を延ばすために、世界一周旅行(東まわり)を2500万回もしなければならないからだ。」p.70
・「星々が天球を一昼夜に一回まわっているように見えても、実際には、星が光よりも早く運動しているわけではない。」p.76
・「角運動量がその質量を越えたために崩壊したような物体を、超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)と呼んでもいいだろう。SEKOは裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、そこでは、時空全体がひどく悪性の領域になっている。」p.167
・「量子力学を利用して超光速通信をしようという計画は、いわゆる "量子結合(カンタム・コネクション)" に集中している。」p.211
・「つまり、間違いのない記録と、時間を逆行して信号を送れる能力さえあれば、過去へ行ったのと同じことができる。」p.223
・「EPR実験によって、超光速通信の研究は大きく一歩前進した。タキオンを生成するとか、時空をねじって閉じた時間の環をつくるというような異様な計画を立てる必要はない。読者諸君、信号を光より速く送信するためには、光子の偏光を個別に測定する方法を発見すればいいのだ!」p.232
・「今日、物理学の間隙をぬって超光速通信機をさがし求めるのは、19世紀における永久機関の探究と似たところがある。」p.235
・「量子論で最大の未解決問題と言えば、「測定とは何か?」である。波動的な可能性を粒子的な現実に変えることができる "観測" を行うとき、いったい何が起こるのか? この基本的問題については半世紀以上も議論されてきたが、まだ答えが出ていない。」p.249
・「こうしたいくつかの抜け穴にひそむ超光速の可能性に対する、筆者の相対的信頼度を表す指標として、仮に1000万ドルを超光速研究に投資するとしたら、量子結合と一般相対性理論には同じ金額――たぶん400万ドルずつ――を、そして100万ドルを先進波の研究に充てたい。残りの100万ドルはその他全般の、実用的なタイムトラベル機構としてはあまり見込みがなさそうなものにまわすとしよう。」p.250
・「ニュートンの決定論的法則にしたがって特殊相対性理論が描いたひとつづきの宇宙は、過去と未来が永遠に定まり、博物館のように静的で、その全歴史は初めから終わりまで琥珀の中に固められたかのように不動のものである。」p.257
・「簡単に言えば、量子論は、この世界が可能性の集まりであるとし、測定を行うことで、その可能性の一つが現実になるというのだ。」p.259