Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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ダークチョコレートを食べて2型糖尿病を予防しよう!

2024年12月18日 | 医学と医療
世界最高峰の医学誌の一つBMJ誌のクリスマス号は,毎年,面白論文を掲載することで知られています.そろそろ掲載されたかなとHPを眺めたところ,まだ早かったようですが,これはクリスマス号の論文かしら?と思ってしまうような論文が掲載されていました.チョコレート摂取と2型糖尿病のリスクを検討した研究で,ハーバード大学と上海の研究者たちによって行われたものです.糖尿病は脳神経疾患と密接な関連があるので読んでみました.

研究では 3つのアメリカの大規模前向きコホートデータが使用されました.これらのデータには,看護師や医療従事者約19万人の健康情報が含まれており,30年以上にわたる追跡調査が行われています.このなかには研究開始時点で糖尿病,心血管疾患,がんの診断を受けていない人が含まれています.そして,ダークチョコレート,ミルクチョコレート,そして総チョコレート摂取が2型糖尿病リスクに及ぼす影響を分析しています.主要評価項目は自己申告による2型糖尿病の発症で,質問票により診断を確認しています.体重変化も評価しました.

さて結果ですが,週5回以上のチョコレート摂取は,ほとんど摂取しない場合と比べて2型糖尿病リスクを10%低下させることが分かりました(ハザード比0.90; 95% CI: 0.83-0.98, P値=0.07).さらに,ダークチョコレートを週5回以上摂取した場合,2型糖尿病リスクが21%も低下していました(ハザード比0.79; 95% CI: 0.66-0.95, P値=0.006).線形回帰解析により,週1回の摂取増加ごとに2型糖尿病リスクが3%減少することが示されました(図は1週間におけるチョコレート摂取回数とハザード比の関連を示しています).一方,ミルクチョコレートの摂取は,2型糖尿病リスクとの有意な関連は認めませんでしたが,体重増加と関連していました(体重変化のハザード比1.05; 95% CI: 1.02-1.08).ダークチョコレート摂取は体重増加と関連しませんでした.



結論として,ダークチョコレートは2型糖尿病リスクの低下に寄与する一方,ミルクチョコレートは無効で,体重増加を引き起こす可能性が示唆されました.この結果は,チョコレートの種類による成分の違い,つまり強い抗酸化作用を持つフラボノールの豊富さや砂糖・脂肪の含有量,カロリーの違いが影響していることを示唆しています.今後,ランダム化比較試験を通じて因果関係をさらに検証し,具体的なメカニズムを解明することで創薬につながることが期待されます.
Liu B, et al. Chocolate intake and risk of type 2 diabetes: prospective cohort studies. BMJ. 2024 Dec 4;387:e078386.(doi.org/10.1136/bmj-2023-078386

追記:①ダークチョコレートはカカオ含有量45%以上(50~80%)で,ミルクチョコレートは約35%,フラボノールのフラバン-3-オールはダークで平均3.65 mg/g,ミルクは5分の1以下(平均0.69 mg/g)で,砂糖含有量が高い,と本文に書かれています.
②1食分は28gで,ガーナチョコレートにするとおよそ1/2枚ぐらいのようです.

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