ちょっと驚いた論文です.大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome;CBS)は,医学生でも症候や画像所見に明らかな左右差(非対称性)があることを知っています.しかしなぜ左右差が生じるかは専門家も答えられません.最新号のNeuol Clin Pract誌に,ヒューストンのベイラー医科大学から「CBSの左右差は発症前に,末梢性または中枢性に何らかの誘因がある」という仮説を検証した研究が報告されました.つまり病変と対側の手足,もしくは同じ側の脳に外傷などをしていなかったか?を調べたわけです.
著者らは,72名のCBS患者と同数のパーキンソン病(PD)患者の医療記録を調査し,CBS症状発現前の1年間に末梢性または中枢性の誘因があったかどうかを検討しました.この結果,PD患者では発症前の誘因は1.4%のみであったのに対し,CBS患者では20.8%と明らかに高率でした(p < 0.001)(図1).
そして誘因の多くが末梢性でした.
■末梢性の誘因(13件)(図2)
手術:回旋腱板修復手術,手根管開放手術,足の手術,上腕骨骨折の固定,腱鞘炎手術
外傷:手の鈍的外傷や刺傷
骨折後のギプス固定:骨折後の四肢ギプス固定
歯の手術:20本の歯を抜歯する特定の歯科手術
■中枢性の誘因(2件)
脳卒中
頭部外傷
以上より,CBSにおける左右差は,主に対側の手足における手術や外傷が契機となって神経変性プロセスが開始される,例えば局所的なタウタンパクのミスフォールディングや異常な伝播が生じるという可能性が示唆されました.本当かどうか,まだ半信半疑ですが,今後,大規模な前向き研究が行われることで,結論が出るかもしれません.いずれにせよ,今後,CBS患者の問診で追加すべき質問が増えたということになります.
Lenka A, et al. Corticobasal Syndrome: Are There Central or Peripheral Triggers? Neurol Clin Pract. 2025. https://doi.org/10.1212/CPJ.0000000000200365
著者らは,72名のCBS患者と同数のパーキンソン病(PD)患者の医療記録を調査し,CBS症状発現前の1年間に末梢性または中枢性の誘因があったかどうかを検討しました.この結果,PD患者では発症前の誘因は1.4%のみであったのに対し,CBS患者では20.8%と明らかに高率でした(p < 0.001)(図1).
そして誘因の多くが末梢性でした.
■末梢性の誘因(13件)(図2)
手術:回旋腱板修復手術,手根管開放手術,足の手術,上腕骨骨折の固定,腱鞘炎手術
外傷:手の鈍的外傷や刺傷
骨折後のギプス固定:骨折後の四肢ギプス固定
歯の手術:20本の歯を抜歯する特定の歯科手術
■中枢性の誘因(2件)
脳卒中
頭部外傷
以上より,CBSにおける左右差は,主に対側の手足における手術や外傷が契機となって神経変性プロセスが開始される,例えば局所的なタウタンパクのミスフォールディングや異常な伝播が生じるという可能性が示唆されました.本当かどうか,まだ半信半疑ですが,今後,大規模な前向き研究が行われることで,結論が出るかもしれません.いずれにせよ,今後,CBS患者の問診で追加すべき質問が増えたということになります.
Lenka A, et al. Corticobasal Syndrome: Are There Central or Peripheral Triggers? Neurol Clin Pract. 2025. https://doi.org/10.1212/CPJ.0000000000200365