Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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アルツハイマー病に対するレカネマブ第3相試験 3例目の死亡例の報告

2022年12月24日 | 認知症
Science誌の報告です.臨床試験(Clarity AD)に参加し偽薬群であったフロリダ州の79歳女性が,延長試験において8月より初めて抗体を投与されたあとから体調が悪化し,2回目の点滴から頭痛を認め,「文章を完成させることができない」状況となり,日常生活に混乱を生じるようになりました.9月14日に脳卒中様発作を来したのち,けいれん発作が生じ,多臓器不全や肺炎も併発し,入院から5日後に死亡しました.病院の記録によると重篤な「アミロイド関連画像異常(ARIA)」が疑われ(図),ステロイドによる治療(ヘパリンも併用)が行われたが救命できませんでした.臨床像も画像所見も「教科書的な重篤なARIA」と考えられました.

調査したボストン大学のAndreas Charidimou先生は「ARIAは名称の変更が必要だ.この症例が示すように,単なる画像異常ではなく,致命的な臨床症候群なのだから・・・」と述べています. またバンダービルト大学のMatthew Schrag先生は以下の問題を指摘しています.「薬剤の適切な使用について考えるとき,私達はすべてのデータを必要とします.この治療関連死は,9月中旬に発生したにもかかわらず,先月開催された第15回アルツハイマー病臨床試験(CTAD)会議では公表されませんでした.このエピソードは,エーザイとバイオジェンに対する私の信頼を損なうものです.患者の安全が最も重要であり,私はこの治療法が安全であるとは確信していません.この薬剤の上市を急ぐのは間違いです」.実際に第3相試験において13人の死亡が報告され,実薬群と偽薬群で同程度であったと報告されていますが,死亡例の詳細は公表されておらず,レカネマブが死亡要因になったかどうかは評価できないと記事には記載されています.

重要なことは①レカネマブによるARIAではときに死に至ることや,軽症であっても長期的な影響は不明であることを認識すること,そして②レカネマブの安全性について透明性を確保した上で議論することであると考えられます.ちなみにレカネマブに関する懸念,死亡した最初の2例についてはこちらに解説しています.
Scientists tie third clinical trial death to experimental Alzheimer’s drug. Science Dec 21, 2022.


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