■ 日米欧と中央銀行は実質的に国債を直接買っているに等しい ■
アメリカ・・・・QE2でFRBが米国債を直接買い入れ
現在は短期国債から長期国債にシフトして金利を抑制
ヨーロッパ・・・昨年12月に50兆円規模の資金をECBが銀行に注入
銀行がイタリア国債などを購入して金利を抑制
日本 ・・・・日銀が銀行にダラダラと低利の資金を提供して国債を買い支える
「中央銀行が国債を直接買い入れたら、通貨の信認が失われてハイパーインフレになる」
あれ、あれ。インフレどころか、世界はデフレではないですか??
国債と通貨の常識って、嘘だったのでしょうか?
■ 中央銀行のバランスシートは膨張している・・ ■
「通貨」=「中央銀行の銀行債権」
そう考えるならば、FRBやECBのバランスシートは、
リーマンショック以降、大きく膨らんでいます。
単なる紙に印刷をして発行するだけの「通貨」が大増産されているのに、
なかなかインフレにはなりません。
「通貨の借り手」がいる限り、通貨の増刷は可能なのです。
ところで、現在の様に経済が不安定な時に「資金需要」が存在するのも不思議です。
しかし、低利で供給される中央銀行の資金で国債を買い支える間は、
確実に利益が得られます。
民間に安全な投資先の無い現状において、
「国債」は最後のオイシイ儲け話となっています。
日本の状況はFRBやECBの先を行っています。
1980年代からずっと、日本の銀行や郵便局は国債を買い支えていました。
尤も、日本の場合とアメリカや欧州諸国では事情が異なります。
アメリカ国債や欧州各国の国債は、海外か売り浴びせられる危険性を持っています。
様は、アメリカ国債や欧州各国の国債は、単なる小康状態にあるだけです。
銀行やヘッジファンドがその気になって売り崩せば、
それらの国の国債は簡単に暴落します。
しかし、彼らとて命は惜しい・・・。
皆の足並みが揃わなければ、米国債やヨーロッパの主要国の国債売る浴びせは命がけです。
金融マフィアのお許し無くしては、出来ない事なのだと思います。
ギリシャ、ボルトガル、ハンガリーではお許しが出ているという事なのでしょう。
■ 限界に挑戦しつづける日本 ■
一方日本はGDPの200%に迫る1000兆円超えにチャレンジ中です。
日銀が銀行に低利の資金を供給しつづける限りは、破たんは訪れないでしょう。
海外勢が短期国債を売り浴びせてきても、
日本の金融機関が一丸となって、買い支えるのでしょう。
これは、ほとんど限界にチャレンジするような物です。
金利上昇さえ無ければ、このシステムはしばらくは延命可能です。
ですから、日銀はマネタリーベースを絞って、
決して景気を上向ける事はしないのでしょう。
一方、それでは税収が不足して、国債残高が増える一方なので、
5%の消費税増税で、国債の発行スピードを鈍化させようとしています。
しかし、経済を犠牲にするので、税収が落ち込み、
結果としては効果は期待出来ません。
■ 将来の成長を食らう「偽りの成長」 ■
日米欧とも、金融市場は潤沢な資金提供で「偽りの活況」を呈しています。
一方で、それらの資金が一向に実体経済を潤しません。
金融機関が稼いだお金が、損失の穴埋めに使われるならば、
供給される資金は、「借り換え資金」となっているだけです。
確かに金利負担は抑制出来ますが、景気回復にはつながりません。
日米欧ともに、雇用環境は崩壊寸前です。
雇用は若者と高齢者から奪われて行きます。
これは将来の負担となって、我々にのしかかります。
現在の「偽りの成長」を維持する為に、我々が払う将来的コストは膨大です。
■ 行き着く先は結局一緒に思える ■
現在の中央銀行による資金供給は、崩壊を減速させはしますが、
崩壊を完全に止める事は出来ません。
ソフトランディングもハードランディングも着地点は一緒です。
ただ、着地点のダメージが少し違うだけです。
ソフトランディングの場合は、着地点までに幾つかの足跡を残しています。
結果的な損失には差は無いのかも知れません。
■ 300年国債を中央銀行に押し付けてみたりして・・ ■
現状は問題を先送りにしているだけなのだから、
もっとポジティブな先送りは無いだろうか?
例えば、現在の財政赤字を300年国債を発行して未来の彼方に「飛ばし」てしまう。
・・・誰も買わないよと言われそうですが、中央銀行に買わせれば良い。
利子は・・・無利子でも良いではないですか、どうせ民間に売るわけでは無いのだから。
■ 中央銀行の利益が消えた ■
300年無利子国債の中央銀行の買い入れで困る人は居ません。
毎年、30兆円くらい発行すれば、景気もすぐに上向きます。
思い切って、300年の償還期日を永遠にしてみたらどうなるか・・・。
それこそが、「政府通貨」なのでしょう。
これですべての人がハッピーになれそうですが、
一人だけ困る人が居ます。それは中央銀行その人です。
だって、金利利益が消えてしまうのです。
反リフレ論的には、国内の資金需要が無いのだから、
供給された資金は、円キャリートレードとなって海外に流出するとなります。
しかし、世界で一斉にこの政策を取れば、為替レートに大きな変動は生じません。
■ インフレをコントロールできるのか? ■
はてさて、毎年30兆円ずつ過剰に資金供給したとして、
その資金は、最初に金融市場に流れ込むでしょう。
それが最も手っ取り早くお金を稼ぐ手段だからです。
すると株式市場や商品市場では一瞬にしてバブル相場が出現します。
そのおこぼれで実体経済が上向き始めます。
ところが、一端バブルが発生すると、資金提供を止める事は不可能です。
資金提供が鈍った瞬間に、相場が反転して一瞬でバブルが崩壊するからです。
ですから、バブルを維持する為に無限の資金提供が続けられ、
金利上昇を負担する為に、供給される資金はどんどん膨らんでゆきます。
・・・・あれあれ、これってハイパーインフレじゃねぇーー??
(この際、ハイパーという定義は置いておきます)
■ 悪魔の種が芽吹きそう・・・ ■
さて、そこで冒頭に戻ります。
FRBもECBも日銀も、既にこの資金供給の無限ループに片足を突っ込んでいます。
「出口」などどこにも存在しません。
市場への資金供給者が中央銀行のみになっている現状、
中央銀行の引き締め政策は、世界経済の終焉を意味します。
既に株式市場も商品市場もバブルが発生しています。
こららの市場価格は、実体経済から乖離しています。
バルチック海運指数は、将来的な物流をかなり正確に反映しますので、
バルチック海運指数と、金融市場や現物市場の乖離は
かなり世界が限界に達している事を示しています。
後はいつ相場が崩れるのかというタイミングだけの問題です。
世界には既に破滅の種が沢山巻かれています。
どこから芽が出るのかは、悪魔だけが知っています。
<追記>
「冒頭の絵は何?」とお思いの方も多いかと思います。
これこそが「悪魔の実」です。
・・・・漫画のワンピースに登場します。
この実を食べると、人ならざる力が手に入るとか・・・。
尤も私は「ゴム人間」には魅力を感じないな・・・。
やはり、どうせ成るなら「透明人間」・・・。