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架空の中東の地図・・・見せかけの目的と現実

2012-02-10 10:06:00 | 時事/金融危機
 


「国際情勢の分析と予測」より


■ イラク戦争の目的 ■

上の地図はイラク戦争の際に米軍が示した「新中東地図」です。
当時、自国以外の国の地図を勝手に描くアメリカの横暴には驚きました。
さて、この「アメリカにとって非常に都合の良い地図」を眺めてみます。

1) イラク、トルコ、シリアのから「クルト人の国」を分離。(油田地帯)
2) イラク、イラン、サウジアラビアの湾岸に「シーア派の国」を分離(油田地帯)
3) サウジアラビアの西側を分離独立
4)  イラン、パキスタンからインド洋に面した地域を分離独立

イラク戦争はアメリカの勝手な中東戦略実現の為の手段であった事は、
軍が得々とこの地図を掲げて説明した事でも裏付けられます。

■ イラク戦争の目的は達成されたのか? ■

上の地図は軍の「悪乗り」だと思いますが、
いずれにしても昨年12月にイラクから米軍は表向き撤退しましたが、
中東情勢は現在、アメリカの当初も思惑とは全然異なる様相を示しています。

田中宇氏は、早い時期から「イラク戦争は隠れ多極主義者の陰謀」と主張しています。
「失敗が確実なイラク派兵によって、アメリカの衰退を促進する目的があった」と。

その意味においては、イラク戦争の真も目的は達成されつつあるのかも知れません。

■ アサド排除を試みる王国連合 ■

日本のメディアはシリア情勢を「アサド政権による一般人の弾圧」と伝えています。
これは、全く見当違です。あるいは、いつもの「意図的なミスリード」です。

シリアは「アサド派」と「反アサド派」の内戦です。
「アサド派」を支持しているのは、ロシアとイランです。(そして中国)
「反アサド派」を支持しているのは、サウジアラビアやヨルダンやレバノンです。

アラブの王国連合とも言えるアメリカの傀儡政権は、
宿敵であるアサドを打倒し、「中東の春」をシリアでも実現しようとしています。
これは、リビアにおけるカダフィー排除と告示した動きです。

■ 不安定化におびえるイスラエル ■

シリアはゴラン高原でシリアと国境を接しています。
そして、ゴラン高原の一部を、イスラエルは武力的に支配しています。
それでも、イスラエルとシリアの関係は、
表面上の反目とは裏腹に、安定していました。
これは、リビアとイスラエルの関係に似ています。

アサド政権がゴラン高原の治安を維持する限り、
シリアの急進派達がイスラエルとの国境を脅かす事は無かったのです。

現在のシリア情勢に対して、尤も危機感を持っているのはイスラエルかも知れません。

■ 復活する冷戦構造 ■

リーマンショック前後には、世界は多極化しながら一体化すると信じられていました。
中国、インド、ブラジル、ロシアなどの新興国経済が世界を牽引し、
成長点が多極化しながらも、世界はグローバリゼーション化すると思われていました。

しかし、昨年あたりから、世界は急速にかつての「冷戦構造」を取戻しつつあります。
私がそれに気づいたのは、リビアの内乱や、
TPPにかこつけたアメリカの太平洋回帰です。

中東でも、極東でも、アメリカと中露の利害対立が強調され始めています。
シリア問題でも、イラン問題でも、アメリカと中露は対立しています。

アメリカの一国覇権が強力であったイラク戦争勃発時ならば、
中露は口ではNOと言っても、実力でアメリカに到底かないませんでした。

しかし現在のアメリカは、財政難でかつての力を失っています。
中東や東アジアにおける中露の影響力は、増大化しています。
これは、新な冷戦構造の始まりの様に見えます。

世界はリーマンショック以前と異なる姿に向けて変化していると思えてならないこの頃です。