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5%の消費税増税は無意味・・・日本国債暴落の引き金は外的要因

2012-02-08 08:21:00 | 時事/金融危機
 


〔PHOTO〕gettyimages

■ 全く無意味な消費税5%増税 ■

私は断言しますが、消費税の5%増税は全く無意味です。

増税の理由は日本の財政破たんを防ぐ事。
では、日本の財政が破たんするとして、その原因は何なのでしょうか。
それは、中古市場での国債の暴落です。

■ 海外ファンドの売り浴びせでは国債は暴落しない ■

現在、新聞や雑誌などで取沙汰されているのは
海外ファンドの売り浴びせで日本国債が暴落するというもの。
これは現状ではあまり考慮する必要の無いリスクです。

1) 日本国債の海外の所有者のほとんどは中央銀行
2) 日本国債の国外所有率は10%弱

かつて何度か海外のファンドが日本国債に戦いを仕掛け、
その度ごとに、敗れ去っています。

3) 海外ファンドが日本国債を売り浴びせる
4) 日銀が直接市場から日本国債を買い入れる
5) 日本の金融機関も所有する日本国債に評価損が発生するので国債を買い支える

自国通貨で発行され、国内金融機関が大量保有する日本国債を
海外勢が売り浴びせによって暴落させる事は、ほとんど不可能です。

■ 金利上昇リスクは摘み取られている ■

銀行関係が恐れているのは、金利上昇による低利の日本国債の含み損の拡大です。

1) メガバンクは短期国債にシフトして、金利変動リスクを軽減している
2) 生保関係は長期保有扱いとして、国債を時価評価していない
3) 日銀はマネタリーベースを絞っているので、意図的に景気回復の芽は摘まれている
4) 金利上昇で金利負担が上昇するのは新発国債162兆円(借換債を含む)

ところで国債金利にまつわる論議で、
金利が1%上昇すると10兆円の金利負担が増えると言う人がいますが、
既発国債の金利は、金利変動型以外は固定金利です。
ですから、金利上昇による負担増加は新規発行分の国債に限られます。

22年度の新規国債発行は44兆円ですが、
この他に特別会計で「借換債」という予算が組まれています。
これは償還期日を迎えた国債を、
借り換えによってロールオーバーする為に発行する新規国債です。
実は、日本では一般会計の新規国債よりも、
「借換債」の額が大幅に多く、その額は118兆円になります。

国債金利が仮に1%上昇したとして、(短期債ではなかなか1%上昇しませんが)
単年度の金利負担の上昇は1.62兆円となります。


そもそも日銀がマネタリーベースを絞っている限り
国内要因によるインフレリスクは存在しないので、
当面の金利上昇リスクは無視出来ます。
景気を犠牲にして財政破綻を防ぐという究極の選択なのでしょう。

■ 高齢化による預金残高の減少 ■

高齢化によって預金が取り崩され、
金融機関の預金残高が減少して国債が消化できなくなるという説も良く聞きます。

1) 年金の積立金は既に国債の売り手になっている
2) 高齢化による預金の減少は、中長期的リスクとしては無視出来ない

しかし一方で日銀はマネタリーベースの拡大余地を残していますので、

3) 預金減少による影響は日銀の資金提供で補われる
4) 不景気が続く限り、国民の貯蓄志向は高い

■ 貿易赤字の恒常化 ■

昨年度は1980年来初めての貿易赤字となりました。

しかし昨年は大震災による輸出低下と、
原発停止による原油、天然ガスの輸入増加が貿易赤字の要因です。

1) 日本は貿易黒字よりも、所得黒字のほうが大きい
2) 国債収支が経常赤字になるまでには、まだ時間が掛かる

短期的に日本が経常赤字国になる心配は無く、
この点からも日本国債はマダマダ長生きしそうです。

■ 日本国債のリスクは、海外発のリスク ■

「何だ!!人力は今まで日本国債は破たんすると言っていたじゃないか!!」
という、お叱りの声が聞こえてきそうですが、
日本国債の破綻の足音は、ヒタヒタと近づいています。
それは、海外発のリスクです。

1) ユーロ危機がコントロール不能になりユーロが崩壊する
2) 連鎖的にCDSイベントが発生し、巨大銀行の多くが即死する

3) アメリカの実体経済の回復が遅れ、国民が暴動を起こす
4) アメリカ国債への不信が高まり、米国債が暴落する

5)  中東戦争が勃発し、世界がインフレ状態に突入する


このいずれかのリスクが発生すれば、
人々はさすがに日本の財政破綻を意識せざるを得ません。
老人達があわてて老後の資金を銀行から引き出そうとした瞬間、
日本国債は暴落し、そしてメガバンクを含めすべての金融機関が破たんするのです。

あるいは海外危機が一気に進行しなくても、
海外の金融市場の下落で、日本の海外投資が大きく毀損するリスクもあります。
「日本は世界最大の債権国」だから大丈夫。
「所得収支の黒字が、貿易赤字を上回るから大丈夫」という前提は
簡単に崩れてしまいます。

リーマンショックの際にトヨタが計上した損失の原因は、
車の販売台数の低下による要因よりは、
内部保留の運用によってこうむった損失の方が大きいのです。

既に金融市場は「蜃気楼」の様な幻影の市場です。
崩壊が起きれば、一気に消え去る「所得黒字」にどれだけの意味があるのでしょうか?

■ 消費税5%増税は必要ない ■

外的要因による日本国債破綻に、消費税5%増税は全く無意味です。
既に1000兆円発行されている既発国債のリスクに対して、
新規発行国債の若干の削減など、全くもって無意味なのです。

唯一、意味があるとすれば、不景気を加速させ、
恒久的な低金利を確実にする事くらいでしょうか。

尤も、税収が減少しますから国債発行額が減る保障はどこにも有りません。

消費税5%で一時的に増えた税収は、
特別会計という裏口からアメリカに貢がれて終わりでは無いでしょうか?
それにした所で、スズメの涙の様な金額ですが・・・。