■ アメリカ人も住宅取得に慎重になっている ■
Wallstreet Jounal の次の記事はとても含蓄の深いものがあります。
離婚した女性が住宅を取得すべきかどうかを、
弁護士である記者の父の助言を元に考察しています。
【コラム】女性が家を買うのは賢明な選択肢か
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_396497?mod=WSJFeatures
日本のジャーナリズムには、こういう文体の記事は皆無です。
フィナンシャル・タイムスなどの日本語訳を読んでいても、
このような、ちょっとしたエッセイの様な記事を良く見かけます。
日本の新聞記者は、高校生でも書けそうな文章で、
正確さだけを重視して文章を書きますが、
あれはジャーナリズムでは無く、単なる連絡や報告です。
そんな物のお金を払う時代は、そろそろ終わるのではないでしょうか。
さて、この記事で書かれている事は、日本人では既に骨身にしみています。
住宅を購入するメリット
1) 「所有者としてのえも言われぬ喜びが得られる事」
住宅を購入するデメリット
1) 移動の制限
2) 投資リターンの喪失
3) 継続的な支払い(税金、保険、修繕・維持費)
4) 集合住宅では厄介な住人が一人居ればトラブルになる
筆者は「家を持たなければならない」という社会通念が変化するであろうと見ている。
■ 家を所有する事が、「打ちでの小槌」であった時代は終わった ■
リーマンショック以前のアメリカの住宅バブルは、
日本では理解し難いシステムの違いによて生み出されました。
アメリカは住宅を購入した後に住宅価格が上昇すれば、
上昇した価格に応じた担保価値が新たに生まれるのです。
ですから、比較的貧しい人達が無理をして住宅を購入して、
住宅価格の上昇分で新たなローンを組んで返済に充てていました。
ですから、住宅価格が下落すれば、後には借金だけが残ります。
一方、中間層では住宅価格の上昇分によって新たに生まれる担保で
自動車ローンを組んだりして消費に勤しみました。
ですから住宅価格の下落は、アメリカの消費の冷え込みに直結したのです。
リーマンショック後、アメリカの住宅価格は下落し続けています。
ですから、アメリカの消費が復活する事は無く、
当然、実態経済は縮小こそすれ、拡大する事はありません。
■ デフレに隠されたインフレ ■
上の記事はデフレで住宅価格が下落する中で住宅を取得する危険性を指摘しています。
これは、現在のアメリカ人の常識でしょから、
安定した収入が継続的に約束された人以外は、
いくら金利が低くても、ローンを組んで住宅を買う事をリスクと考えています。
実際にはFRBはインフレターゲットを採用していて、
アメリカの物価は年率2%で拡大しています。
ところが、この2%の大きな要因は原油価格の高騰と、
ドル安による輸入物価の上昇に負うところが大です。
一方、消費は低迷していますので、コストアップを商品価格に載せられない状況です。
ですから、消費者物価は原油など輸入物価の上昇が無ければ
明らかにマイナスになります。
新聞記事などでは、FRBは盛大にお金をばら撒いて
2%のインフレを実現しているのだから、
日銀は一層の緩和をすべきだという意見も見られます。
しかし、FRBがキチガイの様にお金をばら撒いても、
輸入物価高騰の影響を除けば、アメリカはデフレに陥っています。
緩やかなスタグフレーション状態ですが、
さならる原油高などで、物価上昇の圧力が高まれば、
住宅価格などは下落するのに、ガソリンや生活必需品が値上がりします。
これは、アメリア国民のとっては、生活に対する直接的脅威となります。
■ アメリカに訪れる偽りの回復 ■
日銀の金融緩和は、円キャリートレードの形でダウを押し上げています。
円が売れらるので、為替レートも円安になります。
世界は偽りの回復に浮かれています。
かつて日本にもこの様な時期がありました。
しかし、日銀が金利を上げた為、この弱い回復の芽は枯れてしまいました。
FRBは日本の状況を良く研究していますので、
今回の偽りの回復で、景気が若干上向いても、
金融緩和を緩めることはしないでしょう。
寧ろ、積極的にQE3という荒業を打ってくるかも知れません。
しかし、それらのマネーが商品市場に向かった時、
原油価格や穀物価格が上昇して、アメリカの物価に更なる上昇圧力が掛ります。
物価上昇率が2%を超えて上昇する時、
FRBは金利引き上げに踏み切れるでしょうか?
答えはNOでしょう。
■ 長期金利は上昇するか ■
物価が上昇し始めた場合に、長期金利はどうなるでしょうか?
長期金利は資金需給よりも、経済の先行きに左右される傾向を持ちます。
さらに長期国債の金利と密接な関係を持ちます。
既にFRBも日銀も長期国債の買い支えに踏み切っています。
明らかに長期金利に上昇圧力が掛かっています。
市場は長期的には、経済が悪化すると見ているのです。
長期金利の上層は住宅市場を直撃します。
アメリカ政府は住宅市場復活を最大の目標としています。
ですから、長期国債の金利をなりふり構わず抑制する政策を打つでしょう。
■ ダウに加熱感が生じた時、お金は何処へ向かうのか ■
ダウはリーマンショック後の最高値を上抜けて上昇しています。
しかし、ダウが上昇する好材料はあまり見当たりません。
市場は売り時を模索しながら、買い上げているはずで、
どこかでドカンと来る可能性は、頭の片隅に入れておく必要があります。
ダウが下落すれば、日経平均もつられて下げます。
ところで、株式市場を逃避したマネーは何処へ向かうのでしょうか。
ギリシャ危機がさらに悪化していれば、国債市場は低調でしょう。
多分、マネーは現物市場に流入します。
これはリーマンショック前夜の状況に似ています。
あの時も、原油価格が上昇しています。
既に原油価格の上昇は顕著です。
■ インフレを抑える事ができるのか? ■
FRBは2%,日銀は1%をインフレターゲットとしています。
現在の世の中はデフレ基調なので、インフレターゲット=金融緩和 です。
ところで、物価が上昇し始めてインフレターゲットを上抜けしたら
FRBや日銀は、緩和政策を止める事をアナウンスするのですしょうか?
それとも何か理由をつけてターゲットを上方修正するのでしょうか?
いずれにしても、物価上昇が金利上昇圧力となった時、
アメリカと日本の最終章が開かれる事になりそうです。
中央銀行の自国国債の大量購入です。
これでも、市場が混乱しなければ、
私達の心配など虚構だったという事になります。
しかし、その先は「中央銀行不要論」です。
「政府通貨で問題無いじゃん」となります。
果たして、こんな結末を、世金融マフィアが許すのでしょうか?