■ 1枚300円の出会い ■
音楽との出会いはいつも唐突です。
徹夜仕事で流しているラジオから突然流れてきたり、
ぶっらっと入ったカフェのスピーカーから流れてきたり、
友人のカーオーディオから流れてきたり・・・。
Luka Bloom (ルカ・ブルーム)というシンガーとの出会いは、
秋葉原のソフマップのCDショップだった。
今から15年以上前だろうか、
職場が秋葉原にあったので、昼休みは良くCDを漁りに出かけていた。
店先に無造作に置かれた箱の中には、
1枚150円とか300円のCDが乱雑に投げ込まれていた。
その中の一枚が、何故か気になって300円で購入したのが、
Luka Bloomのデビューアルバム、『RiverSide』だった。
白黒のちょっとピンボケの写真、。
やぶ睨みの視線。
当時、流行っていたと言えばそれまでのスタイルのジャケットだが、
妙に惹かれるものがあった。
もともと私は、CDはジャケ買い派だ。
ラジオなどで一聴して「良いな」と思ったCDはすぐ飽きる。
ジャケ買いしたCDは、最初は良く分からない物が多い。
良いのか、悪いのかだけでなく、
どんなジャンルなのかも分からない場合が多い。
輸入盤ともなると、いったいどんな系列のミュージシャンなのかも分からない。
だから最初は、分からないながらも何回も聞く事になる。
すると、ある日突然、ベールが剥がれる様に音楽が訴えかけて来る事がある。
ジャケ買いしたCDに7割は外れない。
ジャケットは、雄弁に音楽の内容を語るものなのだろう。
話が外れてしまったが、秋葉原で300円で出会ったLuka Bloomも
最初は「普通」に聞こえた。
確かに力強いエレアコ・ギターは上手い。
歌も上手い。
でも、良くあるフォーク・ロックに聞こえる。
ライナーツには、アイルランドのシンガーのデビュー作とある。
兄は伝説的なアイルランドのバンドのメンバーと言うが、
私は残念ながら、ムービング・ハーツも兄のクリスティー・ムーアも知らない。
だから、日々、その歌と音だけと向き合う事になる。
すると、Luka Bloomの歌は、ある日、ストンと私の心のある部分にピタリとはまり込む。
何処が素晴らしいとか、このテクニックが凄いとかでは無い、
心の中に「ある形の窪み」が最初からあって、
それにピッタリの形の彼の歌が、当然の様に収まったという感じ。
そうして、素性すら分からないアイルランドのシンガーは、
何故か私には、特別の存在となった。
■ アイルランドの吟遊詩人 ■
セカンドアルバム『Turf』は輸入盤で入手した。
一作目の激しい曲調とは一変して、
深い沈み込む様なギターのトーンが印象的だった。
簡単な言葉で綴られた歌詞は、
しかし、素直に故郷への郷愁を歌っていた。
飾りを一切捨て去った歌は、こんなにも強いものなのかと思った。
その中の一曲、『Diamond Mountain』は名曲だと思う。
それでもネットがあまり発達していなかった時代、
Luka Bloomの情報は日本にはほとんどなかった。
彼がどんな存在なのか、私は全く知らずに現代に至っていた。
ただ、ニューヨークのロアー・イーストのライブハウス
『ニッティング・ファクトリー』の改装後の杮落しが、
Luka Bloomのライブだという小さな記事を、ジャズ雑誌で見かけた。
『ニッティング・ファクトリー』と言えば、
世界で最も最先端の音楽家が集う場所である。
そんな場所の記念すべきライブがLuka Bloomであった事が妙に嬉しかった。
オーナーのマイケル・ドーフが私と同じ好みだった事が嬉しかった。
■ アデルを聞いていたら・・・ ■
先日、スポーツジムのランニングマシンのTVを見ていたら
レディー・ガガが映っていた。
特に好きなアーティストでは無いので、漫然と見ていたが、
マドンナと異なり、彼女が少し「ふっくら」している事が気になった。
家に帰ってネットで「レディー・ガガ デブ」で検索したら、
Adelというイギリスの女性シンガーが引っかかってきた。
Youtubeで見てみたら、結構歌も上手し、PVも素晴らしかった。
って言うか、『Rolling In The Deep 』のPV、久々に鳥肌もんだった・・。
で、Adelを聞いていたら、何故か
メリー・コクランというアイルランドのシンガーを思い出した。
圧倒的な歌唱力を持ちながら、酒とドラッグに溺れた歌手だ。
レナード・コーエンの「ハレルヤ」も彼女に掛かればこの通り。
ジョン・ケールのバージョンと双璧を成すのではないでしょうか?
もう一発、こういうシンプルな曲が上手いんです。
そうしたら、アイルランド繋がりで、急にLuka Bloomを聞きたくなった。
ググったら、こんな素敵なブログ記事を見つけた。
「アイルランドの吟遊詩人 ルカ・ブルーム 『イレヴンソングス』 」
http://paddington.air-nifty.com/blog/2009/03/post-be50.html
「魂の輝きを聴いた夜 ルカ・ブルーム ブリスベン公演を観て」
http://paddington.air-nifty.com/blog/2009/04/post-b133.html
私が拙い文章を綴るより、雄弁にLuka Bloomの魅力を伝えている。
そして私は一週間、Youtubeで彼の映像を見続けている。
これは幸せなひと時だ。
本日は、ごく私的な音楽雑記でした。
アイルランドの音楽は、アイリッシュトラッドだけでは無いのです。