■ 楽観ムードが広がっています ■
日銀のインフレターゲット発言と、10兆円の追加緩和を受けて
日経平均株価が上昇しています。
円安がそれを後押ししています。
アメリカでも、FRBが2%のインフレターゲットに言及し、
経済指標が上向いたとして、ダウ平均が上昇しています。
世界は20日のEU蔵相会談でギリシャの第二次支援に目処が付くと楽観しています。
年末のギリシャ危機以来萎縮していた市場は、
少しでも明るい情報に飢えています。
穴倉にじっと潜んでいた投資家達に、
中央銀行とマスコミが「コマセ」を撒いています。
■ 典型的な市場操作 ■
3月決算に向けた景気回復の演出なのは明確です。
銀行や生保が保有している株価の含み損が決算に影響を与えない為の
この時期の金融緩和と株の買い上げです。
市場関係者も、個人投資家もバカではありません。
決算シーズンを過ぎるまでは、安心して買える環境にあると判断しているのでしょう。
この際に損を取り返しておきたいと思うのは人間として自然な感情です。
一方で金属先物市場は下落していますし、
バルチック海運指数の記録的な低水準ですから、
景気の先行きには赤信号が点灯しています。
ですから、決算期を乗り切ったら、
市場は売り一色になる可能性があります。
問題はどこで売りが仕掛けられるかです。
情報を持つ人達は安全に売り抜けるでしょうが、
多くの個人投資家達が逃げ遅れる事になるのでしょう。
■ ギリシャはデフォルトのテクニカルな調整に入った? ■
ドイツ、オランダ、フィンランドといったユーロの黒字国が、
最近ギリシャに冷淡です。
ギリシャ政府が緊縮政策を確実に実行する確信が持てなければ
第二次支援は行えないという意思を表明しています。
ギリシャの寄せ集め内閣では、計画実行が危ぶまれれるので、
総選挙の結果を見てから融資を決めるなどという揺さぶりも掛けています。
イタリアの様な実務的な内閣への変更を要求しているのでしょう。
一方でECBが保有するギリシャ国債を、
新規に発行する額面と利率、償還期限が同等の国債に借り替える案が浮上しています。
「ECBのギリシャ債交換、他の債権者を「劣後化」-CDS決済の可能性」
(ブルームバーグ 2012.02.18)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZJ67Q0YHQ0X01.html
どうやら、ECBに新規に発行するギリシャ国債は
ギリシャ政府が「強制的債務再編」(「集団行動条項(CAC)」)に踏み切っても
その影響外にある様です。
各国中央銀行が所有するギリシャ国債も、
同様に新規国債に交換出来るか、
各国中央銀行がギリシャ政府と交渉する情報もあります。
これでは民間の所有するギリシャ国債のリスクが高くなってしまいます。
ECBのこの発表は、民間銀行の債権の一部放棄をさらに難しくし、
ギリシャをデフォルトの淵に押しやってしまいます。
全く、EUは何を考えているのでしょうか?
ところでこの記事はどう解釈すれば良いのでしょうか?
「ギリシャ債のCDS残高、1年前から減少-米証券保管振替機関」(ブルームバーグ2.16)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZI85A07SXKX01.html
<引用開始>
2月16日(ブルームバーグ):米証券保管振替機関(DTCC)によると、ギリシャ債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の残高は正味の想定元本32億ドル(約2500億円)を対象とする4183枚となっている。
DTCCによると、残高は1年前の56億ドル対象の4713枚からは減少しており、年初来ではほぼ横ばい。
ギリシャ債1000万ドル相当を5年間保証するコストは前払い分690万ドルと年間10万ドル。これは、この間にデフォルト(債務不履行)する確率が90%であることを示唆している
<引用終わり>
32億ドルとは2600億円程度でしょうか?
ギリシャ国債の発行残高27兆円の4倍、
100兆円近くのCDSが発行されていると報道されていました。
<引用開始>
東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏が言う。
「ギリシャ国債の発行残高は3500億ドル(約27兆円)ほどです。しかし、これに対するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、その4倍になるとみられている。多くの金融機関が、ギリシャ国債の購入に際し、総額100兆円超の保険を掛けてリスクヘッジしているわけです。つまり、ギリシャの債務不履行で問題となるのは、表に出ている数字の4倍ということになる。その支払いを迫られる金融機関は甚大な打撃を受けます。
<引用終わり>
何だかキツネにつままれた様な話です。
2600億円のCDSとは、米国銀行が発行したCDSの額なのでしょうか?
ギリシャをデフォルトさせるのでしょうか?
CDSイベントが発動しても、ECBが所有する分をデフォルトとしない事で、
危機を乗り切れるというテクニカルな判断が確立したのでしょうか?
ギリシャ危機の目的が「金融危機による財政統合」にあるならば、
このままギリシャが救済されてしまえば、目的は達成されません。
ギリシャ問題はもう一波乱、二波乱を見込んだ方が良さそうです。
EUの国民達が震え上がって、「財政統合止む無し」という所まで追い込んでゆくのでしょう。
欧州はまだ危機が足りないのです。
■ 現在の回復基調など一瞬で吹っ飛ぶ ■
ギリシャでは20日の結果如何では、再び大規模ばデモが発生するでしょう。
焼き討ちされる商店や銀行の映像が再び世界を駆け巡るかも知れません。
その時、ダウ平均や日経平均は現在の水準を維持できるでしょか?
いくら作られた相場とは言え、そこまで鈍感にはなれないはずです。
しかし、ギリシャ危機に関しては、私達は欧州に翻弄されています。
これはあまり気持ちの良いものではありません。
ストレスが溜まります。
20日のEU蔵相会議の結果で、
世界は協調しているのか、対立しているのかが分かりそうな気もします。
ギリシャ問題が先送りされ、
欧州を回避した資金がアメリカに向かうという筋書きも否定できません。
全ては市場を支配する勢力の筋書きに書かれた事であり、
こんなイカサマなシステムで辛うじてバランスする世界は、
いつか、手痛いしっぺ返しを食らうのでしょう。