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映画・演劇のレビュー

『僕の初恋をキミに捧ぐ』

2010-07-18 22:36:37 | 映画
 『ただ君を愛してる』の新城毅彦監督最新作。宮崎あおいと玉木宏主演のあの映画は傑作だった。だから同じような発想のタイトルによる今回の作品も、彼なら期待以上の作品に仕立ててくれるものと期待していたのだが、なかなか難しかったようだ。  究極の大甘ラブストーリーであることには問題はない。少女マンガが原作なので前作以上にクサイ映画になるのは、当然のことで、そこを避けてリアリティーを追求する必要はこの素材 . . . 本文を読む
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超人予備校『うしばい どなどな』

2010-07-18 22:27:00 | 演劇
 上手いと思った。超人予備校がようやく予備校ではなく、「超人学校」へと成長したことが実感できる秀作である。昨年のアメリカ公演を経て、彼らは一回り大きくなったのだろう。自分たちの演技に対する自信のようなものを身につけたのは大きい。今までは恥ずかしそうにしていた芝居が、いつのまにか、下手は下手なりに、堂々と演じれるようになった。生涯ヘタウマの上別府さんを中心とするどう考えても器用には見えない役者たち( . . . 本文を読む
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あみゅーず・とらいあんぐる『ラベンダー薫る、そらへ』

2010-07-18 22:24:52 | 演劇
 あみゅーずがファンタジーに挑戦する。オリジナルは青い鳥の作品らしいが、1時間20分以内の短い作品として、とてもすっきりとまとめてある。本来そこにあったはずの枝葉のエピソードを大幅に刈り込み、姉と妹のドラマへとシフトし。そこをクローズアップした構成が見事に決まった。ポイントを絞り込んで、シンプルなドラマに作り上げることで、作品はとても清々しいものとなったのだ。  生と死の狭間を旅する人たちのド . . . 本文を読む
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工芸高校『プラズマ』

2010-07-18 22:23:02 | 演劇
 今年のHPFはすごいことになるかもしれない。そんな期待を抱かせるオープニングプログラムだ。もちろん今回の23作品のうちで、工芸高校のこの作品が、きっとベストアクトになるだろう。これ以上の発想の作品は例年の感触から、出てくる可能性は少ないからだ。それくらいにこれはすばらしい出来なのだ。  今回のプログラム全体を掲載したパンフレットを見渡した印象は、各高校がそれぞれに本気で自分たちの表現を目指して . . . 本文を読む
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May『マダン劇 碧の咲く母の花』

2010-07-16 20:03:45 | 演劇
 この重い芝居をしっかり受け止めよう。今、軽いばかりの毒にも薬にもならないような芝居が巷には横行する中、これは貴重な1作である。芝居は娯楽なのだから、楽しくなくては意味がない。だが、それだけでは意味はない。  マダン劇はみんなで楽しむものだから、客席と舞台との垣根を取っ払って一緒に時間を共有して欲しい、と金哲義さんが前説をする。マダン劇の歴史から始まっていろんなことをレクチャーしてくれる。知らな . . . 本文を読む
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『アイアンマン2』

2010-07-15 23:17:05 | 映画
 前作を見たとき、なぜこんな映画になるのか、と考え込んでしまった。つまらないはずはなかったのだ。大人向きのヒーローもの、というのが、作られてもいいと思うし、これがそうであったなら、と期待した。なのに、出来上がった作品はなんとも中途半端で納得のいかない映画だった。武器商人が、正義の戦士になる、なんていうなんともシニカルな設定がいいな、と思ったのに。  主人公のトニーは戦争で金儲けをしてきたある意味 . . . 本文を読む
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『トイストーリー3』

2010-07-15 23:15:45 | 映画
 こんなにも泣かされるなんて思いもしなかった。いや、たぶん泣くな、とは思っていた。前2作にも泣かされたのだから、絶対やられると思っていた。でも、それなりの覚悟は出来てるし、センチメンタルな味付けでは騙されたりしない。こっちはちゃんとした大人だからな! なんて思いつつ劇場へ。  でも、ダメだわ。ウッディーがあまりに純粋で、彼がアンディ-のことを信じて疑わないんだから、もうそれだけでこの映画を信用し . . . 本文を読む
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『レポゼッション・メン』

2010-07-15 23:14:00 | 映画
 これは10年代の『ブレードランナー』だ。オープニングの荒廃した風景や、漢字やひらがなが目立つ雑然とした都市部の繁華街の夜景なんて、あの映画を明らかに意識した意匠だ。もちろんあの映画に匹敵するほどの奥行きはないが、かなりいい線までいっている。  ストーリーの巧みさ、ラストのどんでん返しも含めてなかなかよく練られてある。ダークなトーンで統一しながらも、娯楽映画としての矩は越えず、とてもスリリングで . . . 本文を読む
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_レンチ『クリーム』

2010-07-15 23:11:21 | 演劇
 中山さんの悪意に満ちた芝居は、派手さとは無縁のモノクロームの風景を提示する。テンションは低い。話は広がらないし、描かれる世界の狭さと、息苦しさはかなりのものだ。だが、なぜか舞台から目が離せない。  小さなジュースの会社が、本業のアロエジュースだけでなく、多角経営の一貫として、薬用クリームを作り、それで成功する。会社はジュース部門縮小と化粧品部門の拡大という経営方針を打ち出すのだが、それぞれの工 . . . 本文を読む
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『プレデターズ』

2010-07-15 23:09:38 | 映画
 ロバート・ロドリゲスは『プレデター』シリーズの熱狂的ファンだったらしい。自分の手で完璧な『プレデター』を作りたいと思って、この映画を製作した(のだろう)。その結果、ロドリゲスらしいとってもチープなB級活劇が仕上がった。これは作者であるロドリゲス(監督は『モーテル』のニムロッド・アーントルだが)の思惑通りの映画なのだろう。だが、これでは第1作の『プレデター』にすら及ばない。ましてや傑作『プレデター . . . 本文を読む
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小手鞠るい『時を刻む砂の最後のひとつぶ』

2010-07-12 23:27:42 | その他
 短編連作である。「ひたむきに狂っていく男と女」だそうだ。残念だが、これではやはりダメだと思う。彼女が描きたいことはわからないでもない。だが、ここまでペラペラな人間描写では、まるで納得がいかない。彼らを駆り立てる狂気がまるで伝わらない。頭の中で作っただけのお話で、彼らを衝き動かす衝動的な感情にリアリティーのかけらもない。  全体の構成もなんだか中途半端で感心しない。独立したエピソードと、連続する . . . 本文を読む
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『ザ・ウォーカー』

2010-07-12 22:32:53 | 映画
 (承前)それに対して『ザ・ウォーカー』は全く同じ設定のドラマなのに、ここには感動がない。寡黙な主人公は1冊の本を届けるために旅を続ける。西を目指してどこまでも行く。『ザ・ロード』と同じようにいくつものサバイバルを乗り越えて行くのだが、こちらの主人公デンゼル・ワシントンはヒーローだ。めちゃ強い。だが、こちらの敵も強い。ゲイリー・オールドマン率いる強烈な面々だ。と、いうことで、アクションはド派手なも . . . 本文を読む
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Ugly duckling『ゲゲゲのげ』

2010-07-11 22:03:49 | 演劇
 2時間半の大作である。300の名作にアグリーが挑戦する。現代演劇レトロスペクティヴの第二期開幕だ。80年代を代表するさまざまな作品から、今回、池田さんが選んだのは渡辺えり子作品。これはアグリーのカラーにぴったりだ、と思ったのだが、実際のところはかなり難しい。  今、この台本を上演することの意味が感じられない作品になったのが残念だ。この企画に於いては、台本をいじるわけにはいかないので、リメイクと . . . 本文を読む
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ジャブジャブサーキット『蒼の組曲』

2010-07-11 21:30:36 | 演劇
 未来人を描いても、宇宙人を描いても、はせワールドはまるで動じない。ふつうならこういう設定をやると、ただのバカバカしい芝居になるはずだ。その安っぽさに苦笑させられることになるのは必至なのだが、それをはせさんがやると、なんだかただの「ふつう」になる。この芝居の他の登場人物たちと同じように認めてしまう。  はせさんはどこまでも真面目にしている。その結果、それに笑わされることになる。真面目だから笑える . . . 本文を読む
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小手鞠るい『愛を海に還して』

2010-07-10 06:32:23 | その他
 久しぶりに小手鞠るいの小説を読んでみることにした。正直言うとこの人の生ぬるい世界は性に合わない。だが、角田光代が帯に書いている文を読んで、もしかしたら、と思い手に取った。「幸福というかなしみ。喪失というゆたかさ、こんなふうに人を愛することが、こんなふうに人を失わずにいることが、私たちにはできるのだ。」という一文である。なかなか、ではないか。彼女が言うようなことが書かれてあるのだとしたら、この小説 . . . 本文を読む
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