クアトロの父は昔にドイツのパン屋さんを巡るツアーに参加したことがある。
田舎の小さなパン屋から大規模な施設を持つパン屋まで見学をした。
技術や原料はもとより、やはりその土地の空気がパンの善し悪しを決めるのかなと感じたクアトロの父。
大手の製粉会社とパン屋さんが主体のツアーのため、冷凍パンなどの技術に注目が集まっていたが、クアトロの父には田舎の小さなパン屋が、その日の温度や湿度でパンの配合 や焼き方を変える話の方が心に残った。
食文化の違いとかたづけると身も蓋もない。
あれから、すでに数十年なのだが、あのツアーで体験した田舎のハード系のパンが身近でも食べられるようになってきた。
クアトロの家のある豊四季駅から三駅目の江戸川台にも天然酵母や素材に大いにこだわったパン屋が出来ていた。
今日はその噂を聞きつけて出かけてみたクアトロの父だ。
駅からは近いのだが、パン屋の看板らしきものもなく、大きな木の扉が常時閉まっていてお客を拒絶しているようなお店がその噂のパン屋だった。
知る人しか訪れないようなお店だ。
勇気を持って扉を開けると、美味しそうなハード系のパンがブティックのように並んでいる。
店内にもうひとつ大きな扉があり、扉が開くと広くて明るいパン工房になっている。
とても期待出来そうなパン屋だ。
今日はホワイトシチューと共に、そのパンを食べる。
これが何とも美味しい。
大きな扉のむこうに、ドイツの田舎で味わったパンの味を思い浮かべたクアトロの父だ。