LOVE モータサイクル 団塊世代のバイクライフ

02年式の古いロードキングで、ツーリングやキャンプを楽しんでいます。

The Civil War Ⅱ

2008-12-31 21:43:08 | 本と雑誌

大晦日に読んでいる本は,佐藤賢一の「アメリカ第二次南北戦争」です。
前頁の続き,ハーレーについて書かれている部分の引用です。

佐藤さんも,ハーレー乗りなのでしょうか。 めっぽう詳しいですよね。[E:happy01]

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ハーレー・ダビッドソンは銀色のメッキパーツに世界を閉じこめることができた。質の高い仕上げの賜物といおうか、きらきらに磨いてやりさえすれば、流れゆく景色という景色を鏡さながらに映し出すのだ。
「わけても、小さなヘッドライトカバーだ」
 馬鹿みたいに広いハンドルの両端を、いっぱいに腕を伸ばして握りながら、まがりなりにも前を睨んで走らせれば、そこに世界は見事なまでに凝縮される。染料のように鮮やかな空の青に、横長の雲が鋭利な矢尻を連想させながら、いつ絶えることもなく流れ続けるからである。

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 実際に跨ると、遠目の印象ほどに大きいわけではなかった。全幅と全長でみれば、確かに世界最大級の数字になるのだが、全幅の内訳をいうならば、ただハンドルが幅広いというだけなのであり、むしろ車体そのものはスリムなのだ。伝統のV型二気筒エンジンが、シリンダーを前後に並べる縦長の形状を取るために、全長は長くせざるをえないながら、横幅は特に広げる必要がないのだ。
 おまけにアメリカ人は実は短足なのかと思うくらい、シートが極端に低く設定されているので、余裕で足が地面に届く。

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 驚いたことに、ハーレー・ダビッドソンはフロントフェンダーからメーターカバーから、普通はプラスチックで形成するパーツも全てが鉄だった。鉄なら鉄で作らなければならない部品にしても、まるで軽量化など考えられていない。

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 なるほど、トリップメーターなどは確かに液晶デジタル表示だった。ウインカーなどもコンピュータ制御で、自動にキャンセルできるシステム内蔵である。が、ハーレー・ダビッドソンは車体からエンジンから、その基本的な設計が半世紀前のままだったのだ。

 「それをハーレー・ダピッドソンならではの伝統というか」

 技術革新の意欲がない。要するに進歩がない。だというのに排ガス規制で締め出される前までは、平気で世界中に輸出していたというのだから、アメリカ人の神経が理解できない。いざ走り出してみても、私の反感は容易に消えてなくならなかった。
 まずクラッチが重い。アメリカ人は手が大きいのか、それともゴリラ並みの握力なのか、重いばかりかレバーそのものが厚く大きな部品であり、日本人には握りにくいこと、このうえなかった。


The Civil War Ⅱ

2008-12-31 21:22:53 | 本と雑誌

大晦日に読んでいる本は,佐藤賢一の「アメリカ第二次南北戦争」です。

北部と南部に別れて戦争状態になったアメリカに渡った,日本人特派員を中心に話が進んでいきますが,そこには当然のように「ハーレーダビッドソン」が出てきますね。-

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ニッサンタイタンの車室のドアを,ばたんと閉じたときだった。 不意のエンジン音が轟いた。はじめは結城が,アイドリング状態から一気にアクセルを踏んだのかと思った。 が,タイタンは動き出していない。

よくよく聞けば、音は遠くで木霊して、こちらに近づいてくる様子だった。
 なんでも巨大化するアメリカの流儀で、戦車並みの車格を誇る耕運機かなにかだろうかと、それが次に浮かんできた考えだった。もとより、タイタンであるはずがない。 そのエンジンは八気筒であり、シリンダーの数が多いだけ、個々のピストンは小さくなるので、エンジン音もマルチ特有の滑らかなものになる。

比べると、遠くから響いてきたエンジン音は、たぴごとの爆発を音にして、歯切れよく伝えていたのだ。
  大きなピストンが不器用に上下していた。単気筒、せいぜいが二気筒の音である。ために私は耕運機の類を思い浮かべたわけだが、それにしては魅力的な音だった。その響きは騒音と片づけてしまうには、絶妙に五感を刺激するものであり、しぱらくするとパーカッションのソロでも聞いている気がしてきたのだ。

  私はドア窓から外に尋ねた。「なんなんですか、あの音は。」

 「あの音はハーレー・ダピッドソンしかありえないでしょう」

そう固有名詞が出ると、決して若いとはいえない日本人義勇兵の列は皆が、まるで玩具を与えられた子供のように目を輝かせた。
 「以前は日本にも輸入されてたんだよね。私なんか運転できた口じやないんだけど、ただ眺めているだけで、ありやあ痺れたねえ」
 「そうそうポリス・スタイルなんかで決めてね。赤色灯なんか回してね」
 「それをいうなら、アメリカなんだから、マッチするのは青色灯のほうでしょう」

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「そうか,ハーレーダビッドソンか」
V型2気筒1450ccの咆哮は側まで来ると,今度は「どけ,どけ,どけ」と周囲を威嚇しているように聞こえた。実際のところ,群れていた義勇兵をクラクションひとつ鳴らさずに,その雄姿だけで左右に押し分けることができた。 

 ハンドルバーとフロントフォークがのびのびと羽根を広げる,それは「チョッパー」と呼ばれるスタイルであり,さまにアメリカという感じだった。
あるいは肝を抜かれたのは,ピンクの地色に紫でファイアパターンを描くという,少なくとも日本人には追随できない色彩感覚で施された,タンクとフェンダーの塗装のほうだったろうか。

 ありえないと思いながらも,私は自然と嘆息していた。映画の一場面をみるような,まさに絵になる光景だった。いくら憧れを抱いても,日本人は無自覚に跨るべきではないと思わせたのは,また乗り手の方もハーレーダビッドソンに負けてはいなかったからである。

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どうです? こんな文章を読んでいると,バイクに乗れなくても楽しくなってきますね。

暖かくなって,早くロングツーリングのシーズンが来ればいいなと思ってしまいます。[E:heart04]