全くやる気が見られないウェイトレスがやってきた。飲み物を尋ねる。逆に何があるのかを尋ねると、赤白のワインとビールだと言う。そこで妹には白ワイン、わたしにはビールを注文する。しかし出てきたのは1本の赤ワインだった…。コミュニケーションの困難を感じる。別の男がワインのボトルを持ってきたとき、3ドルを要求した。ドルは持たず、円しかないと言うと少し嫌な顔をし、「650」という数字をテーブルに指で示した。3ドル=650円ということなのだろう。レートを不思議に思いながら、千円札を渡すと、しばらくしてまた別の女性が現れ、周りを気にしつつナプキンに包んだ手を開くと、1ドル札をそっと手渡した。このガランとした食堂には他に誰もいないのに、まるで麻薬でも取引するかのように「おつり」を渡すのである。闇物資を闇取引きしているのだろう。こちらは当惑するばかりだ。その態度から察するに、もしいま武装した警官が入ってきて我々を「違法行為」で逮捕しようものなら、どう扱われるのだろうかと想像する。
白パンは固く、ハムは干からびており、木の根のようなものは臭くて食べられなかった。赤ワインを飲みながら、次第にこのホテルの実体を認識し始めた。敵国アメリカのドルがオールマイティな、闇物資の社会なのだ。また別の女性が現れ「××はいらないか?」と尋ねる。「すみません、もう一度言ってくれますか?」「××はいらないか?」「その××っていうのは、何ですか?」そこでその女性は答えずに帰っていった。その品は何であるか、いまとなっては永遠の謎である。
しばらくして米国人のグループがやってきた。店員にドル札を手渡し、なにか缶詰を開けて食べていた。また別の黒人女性の二人組みがやってきたが、そこには誰も職員が行かなかった。我々がワインを飲み、米国人が缶詰を食べているのを見て、その女性らはいぶかしく思っている様子であったが、まるっきり無視されたのである。彼女らが食べたのはテーブルにあるものと水だけだ。実に失礼極まる態度ではないか。さらに中東のイスラム教徒のグループがやってきた。奴らは「チキン!チキン!」と鳥料理を要求していたが、鼻っから相手にされなかった。この状況で調理したものが出てくるわけあるまい。おそるべし、ホテルのディナーであった。

監獄の看守みたいな人に頼むと、ガチャガチャと鍵を開け、写真を撮らせてくれました。
でも下に降りるのは許してくれませんでした(^益^;