さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

かもめが翔んだスナック 場末の酒場放浪記 九州2

2017年11月30日 | 

    

  学校の先生たちの宴もたけなわ、その中にひときわキャラが立った人物がいた。若いのに頭はつるつる。背は低いのだが、それは足が普通の人の半分くらいの短さだからだ。腹は異様にぽっこりと突き出ており、まるで大玉のスイカを腹の中に入れたよう。まゆげは二つの山がつながった形で、リアル両津勘吉。その二つの山の下に、小さな丸い目が並んでいる。上から見たうずらの卵の目玉焼きのよう。鼻は平べったい。その殿様ガエルみたいなのが、陽気に挙げた手のひらを互い違いに上下させ、両足も互い違いにがに股で上下させている。あやつり人形みたい?ううう、こういう奴に限って、先ほどの「かもめのお嬢さん」みたいなかわいいコにホレてたりするんだよねー。残酷にも絶望的に無理すぎる。しかしそういうものなのだ。なー。

    

 
次に中年のおっさんが「襟裳岬」を歌った。年齢的にも選曲的にも激しく浮いている。同じ場所にいるのにひとりだけ違う次元の世界にいるみたいな?若者ばかりかと思っていたが、そうでもなかったのだ。そのつまらない演歌が終わっておざなりの拍手がパラパラと鳴ったとき、そのおっさんはカウンターにひとり座っている俺のところにやってきた。

 
いやあ~、どうもどうも。わたくしこういうものでして…と名刺を渡してくる。そこに書いてあったのは「教頭 須五井 駄郎」。

へえ、教頭先生、すごいですね。

いやあ~、まだなったばっかりでして。ふぉっふぉっ!

 いや、「すごい」っつ~のは、場末のスナックで、こんなパッと見風来坊の飲んでるやつに、いきなり学校の役職者が名刺を渡すか?よっぽど自慢したいのね、という意味をこめて「すごい」と言ったのですが。。。

 んで、まだヒョコヒョコ陽気に踊っている殿様ガエルさんを見て、「あの方も先生なんですか?」と聞くと、「あ~あれはね、農業実習の助手!」と、特に「助手」の部分を、はっきりと音量を大きくして強調する。はあ、ひたすら階級にこだわるのねー。人一倍「偉い」と思われたいのに、ひたすらその逆の結果になっていることに気づかないほどのおバカ3(^益^;


かもめが翔んだスナック 場末の酒場放浪記 九州1

2017年11月26日 | 

 ここは九州の田舎町。どんなに田舎でも、町であれば居酒屋やスナックはある。東北の被災地を訪ねたとき、津波で見事に更地になったエリアで復興の工事が始まったとき、最初に出来たのが居酒屋とスナックだった。工事現場の人が行くわけですな。トイレの次に作らなければならないのが飲み屋。それが人間の文化というものか。どんどこい、過疎。

 夜の暗がりを歩いていたら、ぼんやりと見えてきたのがスナックの看板の灯り。心のオアシスというか、暗い森のなかを彷徨っているときに見つけた妖怪の屋敷というか。なぜって、ありがちなのですが薄暗い店の中で、カウンターの向こうから「いらっしゃぁ~~い」とつぶやく声がお化け屋敷を思い出させるからです。

   

 その店も、ヴィジュアル的には箱もスタッフも「怪奇館」でしたが、ワンオペのヲヴァ~サンはひたすら明るく、とても感じのいいところでした。だいたい感じが良くなければ、昭和の時代から続いていたりはするわけないのです。

 そしていつものように、その町の栄枯盛衰の歴史、興味深い巷の裏話などを聞かせてもらうのでした。なにせ長年の常連客がひっきりなしに話をしにくる場所なので、面白い情報に満ち溢れているわけだ。

 しばらくすると、20代の若者、男子2人女子2人が入ってきた。ちょっと選ぶ店が違くねーか?ママさんは「先生!」と呼ぶので、どうやらその人たちは近所の学校の先生らしい。若者たちは楽しそうに話し、青年はカラオケで琉球の歌を元気よく歌った。次にカ~ワイイお嬢さん(でも立派な学校の先生)が昔なつかしい渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」を歌い出した。それって、あなたのお母さんの十八番だったりするんじゃ?

かもめが翔んだ日

港を愛せる男に限り
悪い男はいないよなんて
私の心をつかんだままで
別れになるとは思わなかった 「別れ」じゃなくて「捨てられた」んでしょ?
あなたが本気で愛したものは 自分が振られたからって、女を愛せない男と判断する
絵になる港の景色だけ     とはおめでたいですな~。 
潮の香りが苦しいの
ああ あなたの香りよ
カモメが翔んだ カモメが翔んだ
あなたはひとりで生きられるのね だから~、今頃は別の女を口説いているよ?

 思いもよらない突然の別れの理由はわかりませんかー。それはね、あなたくらい純真なおバカさんだから、ちょっかい出したくなったのです。初めて口説かれて真に受けてしまったのでしょう?そういう子は口説くのは面白いけれど、ヤッちゃったら急速に関心が薄れるもの。騒がれちゃあうざいのはトンズラするのが一番。あなたはそいつが誇らしげに数える落とした女の数のひとつになっただけ。そいつのことを「ひとりで生きられるのね」なんておめでたい勘違いをなさっておりますが、そういうやつこそ次々に新しい女をひっかけていないといられないっつー性質なんだよ、きっと。というわけで、これは悲しいほどに男を疑うことを知らない純粋なお嬢さんの、切ない馬鹿さ加減を絶叫する歌なのである。かわいいお嬢さんにぴったりの選曲でした♪

 そうこうしている間に、同僚の先生方が到着した。総勢20人以上!×2000円で前払い。やせた眼鏡、絵にかいたような「うらなり君」が、「ドラゴンボール」を歌い出した。すると、他の外見そっくりなうらなり2号、うらなり3号、4号5号が立ち上がり、「ちゃ~ら~!へっちゃら~~!!!」とフルスロットルの大合唱。この選曲で同族の心の堅い結束かい!きっと数学、化学、物理の連中だ。

 アニメソングは続き、次に2号がものすごい調子っぱずれで「少年よォ神話になれェ!!!!」と絶叫。もちろん他のうらなり軍団も絶叫の合唱だ。カモメが翔んだお嬢さんのドン引いた心境が思いやられて痛ましい。


場末の酒場放浪記 埼玉2

2017年11月23日 | 

 ここは場末の居酒屋。適当なところで、マスターに次に行くべき店の情報を探る。そのマスターは、前日に近所のスナックで何時間も飲み、いまだにそれが抜けていないということだった。「だから今日は飲んでないんだよ!」って、店主なんだけど普段から飲んでるのね^^; どうやらこの近辺に詳しい様子なので、俺が求める条件にぴったりな店を教えてくれそう。

 私が聞いたのは、何十年もやっている、古~いバーかスナック。バーサンがひとりだったり。そういう人は、地域の歴史を長らく詳しく知っていることだろう。だいたいそういう寂れた店は空いているだろうから、ゆっくり話を聞けるというものだ。

 するとマスターは、「そんなのにぴったりの店がこの先にあるよ」と教えてくれました。「まだやってるかわからないけれど、表に出て左の曲がって右側だからすぐ!」

 しかし、「まだやってるか」って、いつでもつぶれそうだったってこと?いやもしかして、寿命が尽きているかもしれないってか?

 それならいまさら急いでもしかたがないが、とりあえずそこへ向かう。ありました。暗がりにぼんやりと入口の明かりが灯っているじゃないか。重い木のドアを引っ張る。中はどんなだろう?誰かに勧められでもしない限り、普通の人なら恐ろしくて絶対に開けられないドアだと思う。リアルお化け屋敷?

 まだドアは10㎝ぐらいしか開いていないのに、中からしわがれた「いらっしゃい…」という声が聞こえてきた。予想通り、いや、予想を超えたタイムスリップ感。昭和初期?本来「ママ」とか呼ぶべきヲヴァ~サンは、髪型も昭和初期モードでややほつれており、服は和服。それも普段着としてしっかり疲れている着物だ。明治生まれの我がば~ちゃんが蘇った雰囲気だ。

 この店の内部は広い。L字カウンターの横にU字カウンターもあり、ゆっくり座っても30人以上は余裕の大箱。凝った木調の内装で、往年の豪華さが偲ばれる。いまは音楽もなく、薄暗いガランとした中にヲヴァ~サンがひとり。客も俺ひとり。話を聞くと、高度成長期には何人もの若い女性を雇っていたそうです。なんだか最盛期の様子が白黒映画で蘇ってきそう。目の前の女性は、それから今に至るまでの歴史をずっと背負っている。

    

 ため息まじりにその話をしてくれました。「いまは誰もいなくなってひとりだけれど、儲からなくってもいいの。ただ続けられればと思ってやっているのよ」と潤んだ目をこちらに向けて、カウンター越しに俺の手を握る。一瞬ではなく、スリスリしてずっと握っている。ふたりっきりで、こ、これわ・・・。どうしたらいいの、と手を離すことも出来ず。

 翌日には夢だったのかと考える。あまりにも現実離れしている場所だった。夢ではないことは、机の上にある、バーの名前が入ったライターが証明しているのであった。


場末の酒場放浪記 埼玉1

2017年11月20日 | 

 ここは埼玉県北西部、私鉄の急行が止まる駅。かつての宿場の賑わいの名残りが感じられるだけに、尚更わびしさを感じさせる町だ。駅前の旧百貨店は更地になっており、商店街はシャッターの閉まっている店が多い。「呉服店」、「ふとん店」、「お茶屋」、「スポーツ用品店」などの看板だけが残っている。もう暗くなってきて人っ気は全くないが、商店街に低音で流れ続けている音楽が逆に寂しさを誘っている。

 少し歩くと遠くに赤提灯が見える。暗がりでランプに引き寄せられる虫のように、私はその居酒屋に向かって行った。暖簾をくぐると、その恐ろしく場末の焼き鳥屋は意外にも7人ほどのカウンター席が一杯で、空いている隙間に腰を下ろした。どうやら私の座った席をはさんで、それまで右の客と左の客は仲良く話をしていたようで、私が座っても両側から大きな声で会話を続ける。酔っぱらいの大声と双方から飛んでくる唾液に辟易したので、お二人にくっついてもらって、どちらかに席を変わってもらおうと提案した。

       イメージです

 しかし私の意に反して、両側から「とんでもない!むしろ、真ん中で話に入ってもらいたいんですよ!」とさらなる唾液が飛んでくる。これでは逃げようがない。それまで全く聞いていなかった会話に入るしかないな、と観念したとき、右の初老の男が「お仕事は何ですか?」と聞いてくる。飲み屋で「仕事」、これはしばしば「社会的地位」と同義語になっているのだが、その話題は必ず「自分はすごいだろう」という残念な自慢話なのである。

 そういう奴に限って、よくいらない名刺を渡してくる。必ず自分の名前の前とか上に役職が書いてある。私に全く関係ないんですけど。そういうのを交換し合うって、なんだか子供が自分の持っているカードを見せ合って、ゲームのキャラクターの強さを自慢し合っているのと同じだな。いい年こいているだけに、恥ずかしすぎるじゃないか。

 そのおじさんもやっぱりそうだった。「大学は三流だったけど、私がいたのは一流企業!」と最後の単語を強調する。私は心のなかで、三流大学だって立派に勉強してれば偉いだろうし、一流企業にだって山ほどカスみたいな連中がいるぞ?しかも「私がいたのは」って、もう退職してるってことだよね。いまカンケーねーじゃん、と考える。

 左のおっちゃんの話のほうが面白かった。奥さんの愚痴である。奥さんはタイ人だそうだ。なんと学生結婚で、プロポーズしたときには「一年に一回は必ず里帰りさせること」と条件をつけられたとか。「それくらい当然でしょ」と口を挟むと、「ひとりなら30万円で済んだけれど、いまは子供二人を連れてゆくから、50万円もかかるんですよ!」と嘆いていました。

 そりゃ大変だねえ。でもよくよく聞いてみると、そのタイ人の奥さんは立派な企業の正社員で、旦那さんよりも収入が多いそうです。なんだよ、旅費も自分で払ってるってことじゃん。なんだか微妙なノロケというか、自慢話を聞かされたような気分になってしまいました。

 すると右にいた「元一流企業社員」のおっさんが、「私の女房も中国人。相手は再婚だから、前の男の連れ子もいるんです」ときたもんだ。地方の場末の居酒屋で、奇妙にインターナショナルな結婚のシンクロ。「やっぱり毎年、里帰りするんですか」と聞くと、「この20年、一回も帰ってないよ」だとか。う~ん、いいのか?何か訳ありの可能性もありそうだが、特に聞きたくもなかった。あちらもそのことに関しては、ことさら言いたくもなかったようだ。

 向こう側では老人2人が自分の病状をさらけ合っている。

俺はねー、いま週に3回透析なの!(それで飲んでて大丈夫なの?)

俺も透析やってるよー。それと関係あるのか、外を歩くとトイレが近くて困るんだ。

俺もだよっ!買い物なんか、もう30メートルおきに、どこでやるかを確認してあるんだ。
(そこまで短いと、出歩くの大変だよね)

いやあ何か嬉しいな。俺だけじゃないってわかると何か元気になるなあ!
(そこで嬉しくなるもんですかー)

あとね、喉にガンがあるんだよ。
(せっかく相手が嬉しいって言ってるのに、あくまで「勝ち」にこだわるのかーしーら)

まあ、昔の職場の役職競争より、病気自慢のほうが嫌味がないかな?
どうぞお大事に・・・って、それでも飲んで楽しむ人生を謳歌!ですね^^;


川越の日は暮れて

2017年11月18日 | 関東甲信越



最近は夕方5時にもなると暗くなります。カメラのレンズは明るいのでよく写る。



川越商工会議所です。有形文化財に登録されているそうです。もともと自由参加の団体
なんでしょうけれど、やはり商売やっている人たちだけにお金はあるんですのう。



「大正浪漫夢通り」というところに入ってきました。
左は洋品屋さんかしら。近年厳しいと思いますが、よく頑張ってますねえ。



電柱や電線がないと、シルエットがきれい。



私は蔵も好きですけれど、こういう看板建築のほうがもっと魅力を感じます。



残っていると感動する店のひとつがこの「写真館」。デジカメの時代になって、それでも
こういう店を使おうという人も少なくなったでしょうねェ。



ここはJR川越駅と、西武新宿線の本川越駅をはさむ商店街「クレアモール」。
すでに川越駅近くの古い居酒屋で一杯やったあとです。一軒目は駅前の老舗店でしたが、
二代目(?)になっており、ちょっと落ち着きのない雰囲気でした。さらにカウンターが
ぎっしりで、隣に座ったおばさんが線香と香水の臭いが混じっておりうんざり。昼間は
職場で狭い部屋に若いお嬢さんの化粧品のきつい下品な臭いで拷問だったので、この日は
運が悪かった。

二軒目を彷徨ってこの賑やかな通りを歩いたのですが、チェーン店が多い感じだし、
若い人たちの客引きがうるさかった。ひと通りが多いとこういうこともあるんだな。



というわけでふたたび川越駅付近に戻ってきて、友人がよく使う店に落ち着いた。
酒場っていろんな顔を持っています。自分に合った好みの店を探すのもなかなか大変。