新聞でとある文芸評論家が、星の王子様を再読したら、王子様が「ヤングケアラー」
に見えてきたと言いました。王子様が「独り切り盛りする星には、手入れを怠ると
星を滅ぼす木や火山があり、注文の多い花は寝たきり者のようだ。10代後半から
介護を経験した今の私には、若者が持ち場を放棄して遠くへ行きたくなるのも、
その後に抱えた心の重りもわかる」と言っています。
たしかにまだ子供なのに、王子様は自分の星で日々世話をしなければならないものが
いろいろあります。そしてとりわけやっかいなのが、「あれしてこれして」と
わがままで扱いが難しいバラの花です。そして王子様がそのバラに別れを告げて星を
出て行くのは、若くして日々擦り切れるように働いているヤングケアラーが自由を
求めて出て行きたくなる願望を現わしていると、そういう経験をした人には読める
のでしょう。
しかしバラの花は介護を必要とする存在というよりは、まだ経験の足りない王子様の
手に余る恋人だったようです。(要介護者のようなつれあいってのもいますが)
あでやかで魅力的だが虚栄心が強く、わがままで要求の多いタイプ。王子様は一生
懸命に相手をするのですが、振り回されて疲れてしまいます。
王子様は善意の愛を注いでいたにもかかわらず、やがて彼女に不信を抱くように
なりました。彼女の取るに足りない言葉を真に受けては、みじめな気持ちをつのらせる
のでした。
しかしバラが王子様に次々に要求するのは、彼女なりの愛情表現の仕方なのであり、
そのようにしかできなかったのでしょう。ついに王子様は、バラの元を去ってしまい
ました。
しかし、王子様は離れたあとで、そのことに気づいたようです。でも一度別れて
しまったら、簡単に元に戻ることはできません。解放されて自由を得たけれど、
それでしあわせになれたわけではなかったのです。
花のすることは矛盾だらけだ。だけどぼくは幼すぎて、花を愛するということが
わからなかったんだ。