リタに惚れた政孝君、フランスのボルドーにワインの造り方を学びに行った帰りに、柄にもなく香水を土産に買って帰ります。喜んだリタは、文学少女だったので、スコットランドを代表する詩人、ロバート・バーンズの詩集をお返しにプレゼントします。そのなかには政孝の留学目的であったウィスキーを謳いあげた詩、”Scotch Drink”が入っていたからです。少しばかりご紹介しましょう。
O thou, my muse! guid auld Scotch drink!
Whether thro’ wimplin worms thou jink,
Or, richly brown, ream owre the brink,
In glorious faem,
Inspire me, till I lisp an’ wink,
To sing thy name!
おお、そなた、私の詩神よ!古き良きスコットランドの酒よ!
うねる地虫のなかを通って逃げ回ろうとも、
濃い褐色になって、縁からこぼれようとも、
輝かしく泡立って、
私の舌がもつれて、目がうつらうつらになるまで、
霊感を与えておくれ、そなたの名前を謳いあげるために。
(^益^)b 「地虫がうねる」というのは、ウィスキー工場の設備で、無数の管を通ってウィスキーができてゆく様子なのです。
Thou art the life o' public haunts;
But thee, what were our fairs and rants?
Ev'n godly meetings o' the saunts,
By thee inspired,
When gaping they besiege the tents,
Are doubly fir'd.
そなたはパブ(居酒屋)の命だよ。
そなたがおらねば、祭りやばか騒ぎはどうなっちまう?
聖者たちの神々しい集まりでさえも、
そなたによって霊感を受けるのだ。
そのとき彼らは口を開けて天幕を囲み、
倍も火を焚きつけられるのだ。
*( ゜Д゜)y-.。o○ 聖者たちも酔っ払ってバカ騒ぎをするの?
When neibors anger at a plea,
An' just as wud as wud can be,
How easy can the barley brie
Cement the quarrel!
It's aye the cheapest lawyer's fee,
To taste the barrel.
近所同志で訴訟を起こして怒りだし、
どうしようもないほどに狂っちゃったとき、
どれだけたやすくこの大麦で作った汁が
けんかをおさめることだろう!
いつでも一番安い弁護士費用なんですよ、
酒樽を味わうことはね。
w(˚曲˚)w いやいやいや、酒は仲直りの薬になることもありましょうが、けんかの種、火に油にもなったりするじゃないですかー。
O Whisky! soul o' plays and pranks!
Accept a bardie's gratfu' thanks!
When wanting thee, what tuneless cranks
Are my poor verses!
Thou comes-they rattle in their ranks,
At ither's a-s!
おお、ウィスキーよ!遊びと悪ふざけの魂よ!
ひとりの詩人の、心からの感謝を受けてくれ!
そなたがおらねば、なんて変な音の言い回しになっちまうか、
私のヘタクソな詩は!
そなたが来れば、私の詩はすらすらと列をなして謳いあげるぞ、
それぞれの尻をとってさ!
(^益^)ノシ 詩人は酔っ払うと、スラスラと詩が口をついて出てくるそうです。
「それぞれの尻をとる」というのはおわかりでしょうか。この詩は、1スタンザが6行になって並んでいます。1,2,3,5行目の終わりと、4行目と6行目の終わりの単語が同じ音、すなわち「韻を踏んでいる」のです。
「悪ふざけ’pranks’」、「感謝’ thanks’」、「言い回し’cranks’」、「列’ ranks’」と、「詩’ verses’」、と「尻’ a-s’」。’ verses’と’ a-s’、ぎゃはは!酔っ払ったら、詩が二列縦隊になってスラスラと出てきたか?
政孝君は、リタから送られた詩集ですから、特にウィスキーの詩は一生懸命読んだはずです。彼は素晴らしい語学力を持っていました。大学の講義に出て、難しい専門書を読むことが出来たのです。でも残念ながら、詩はよくわからなかったそうです。こりゃあ少しばかり訓練と経験が必要ですからね~。