音楽に詳しい友人と飲んでいたら忌野清志郎を勧められ、不覚にも活躍していた頃の
彼を知らなかったことに気づいた。ネットは大変便利で、いくつかのライブをすぐに
見ることができる。
村井が死んでも痛くも痒くもねえ 麻原が歌ってもビートがねえ
勝手にやらせておきなよ 警察も久しぶりに忙しい~
上祐もこの頃元気がねえ マスコミは相変わらずうざってえ
勝手にやらせておきなよ これじゃあ電気代がもったいねえ
朝から晩までオウムオウム テレビをつければオウムオウム
隣のババアもオウムオウム 日本国中がオウムオウム
オウムオウムオウムオウムオウム… ワァー!!!
「勝手にやらせておきなよ」という歌詞が素晴らしい。当時の「オウム産業」に
世間が振り回されているうんざり感がよく出ていますね。
日本国中がオウムオウム ジジイは老人ホームホーム 電車を待つのは駅のホーム
鳥屋にいるのはオウムオウム 水族館にはオウム貝オウム貝
イタリア料理はムール貝ムール貝 ちょっと待ってくれタイムタイム (一瞬止まる)
野球をやるのはチームチーム 巨人阪神はドームドーム エステに通ってスリムスリム
日大水泳部はスイムイスイム 穴を掘るのは労務者労務者
眼鏡がずれてる大村崑大村崑 社長の下は専務専務
「オウムら崑」には笑わずにいられませんが、「うざってえ感」を表現するのには
ビートが効いたロックという音楽がぴったり。
清志郎は宗教が嫌いだったようで、こんな曲もあります。
宗教ロック
気取った女優も入ってる アイドルくずれもすぐ入る
宗教~! 宗教~! さびれた体を癒してもらってるぅ~~
文化人も入ってる ニセ芸術家がまた入る
宗教~! 宗教~! 足りない頭を癒してもらってるぅ~~
テレビ局の楽屋では あっちこっちから呪文が聞こえてる
線香焚いてる奴もいる
バラエティーの本番でうまく笑うために~!
男にふられてすぐ入る メソメソ泣いてはまた入る
宗教~! 宗教~! 貧しい心はメイクじゃ 隠せねえ~~
テレビ局の楽屋では あっちこっちから呪文が聞こえてる
リカちゃん抱いてる奴もいる
バラエティーの本番でうまく笑うために
病気になってはすぐ入る 子供を堕せばまた入る
宗教~! 宗教~! さびれた体をさすってもらってるぅ~~
さびれた分だけ金が必要さぁ~
ロックは反体制と言われますが、幼稚な「きかんぼう」ではない。ここでは宗教に
「足りない頭を癒してもらうため」に、つまり安易に「団体」の「楽になれる物語」に
乗っかることに対するアンチテーゼであり、もやもやとした「あやうさ」、
「ずるさ」に対する明快な批判の表現、触れてはいけないと批判されることも
厭わずに自分の言葉を主張する、筋金入りの姿勢だと思います。
宗教のいんちき度は、要求してくる金額とほぼ正比例する、という指摘もお見事。
今度はスローな曲。
障害者と健常者
ぼくをカタワと呼んでもいいのさ
変な決まりや常識で ぼくをカタワにさせないでおくれ
友情をダメにしないでおくれよ
ぼくをメクラにさせないでおくれ
変なテストや道徳で ぼくをメクラにさせないでおくれ
友情をダメにしないでおくれよ
見て見ぬ 見て見ぬふり
自分だけはカタワじゃないと信じてる
ことなかれ ことなかれの心
それこそまさにカタワの中のカタワ
こういうのも公共放送では禁止されるのでしょうね。「カタワ」の視点から歌って
いるので、ビートを効かせずにじっくりと歌っています。偽善者が「ことなかれ」で
目くじらをたて、自分が「健常者代表」で「障害者」を特別視し、彼らについて語る
ことを規制する「権力」になっている人はどこにでもいるし、その息苦しさをブチ
壊そうという強さがスローな音楽に感じられます。
「タブー」(○×については触れるな、という圧力)は息苦しく精神的に不健康な
ものです(人を傷つける言葉を好き勝手に言っていいということではありません
けど)。「言いたい放題」なのではなく、それを圧迫しようとする不健康さをあばく、
という意味で反体制なのでしょう。
な~んか解説すると陳腐になりますね。音楽はやはり聴いてみないと。。。