続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『桟敷席』

2016-11-16 06:47:16 | 美術ノート

 『桟敷席』

 双頭の女性、女性である印象が強いが、着衣のコートは男物ではないか(ボタンが右についている)頭髪がないのは男女と明らかに分かることを隠蔽するためではないかと思う。男女の合成に意味はあるか・・・後ろ向きの少女の背後霊とも思える。

 少女は劇場の舞台を上から見下ろしている。
 しかし、この絵の視線は少女のスカートの高さ(正面)にあり、本来なら舞台は見えない。見えるとしたら、舞台はずっと上にあるはずである。床板が波打っているように見えるのも異様であり、しかも床は左側に下がっている。
 天井や壁のある『席』という固定された空間でありながら、微妙に不安定さがある。

 遠近法による視点と少女にあてた視点には差異があり、舞台よりずっと下から眺め下しているという不条理な空間である。

 つまり、この桟敷席は現世の物ではない。異世界(冥府)から覗き見ている景色である。双頭の女性(男女の合成/一体化)における無毛・手足の脆弱は人間の実態が融解しつつある流れのように感じられるし、彼女(もしくは彼)は舞台(現世)を見ている少女の両親(先祖)だと思う。

 不思議に不条理な桟敷席、これはどことも定められない宙宇(黄泉の国)であり、《見ている》ことは、即《見られている》ことである。
 マグリットの《見ていてください!》という母(少女)への希求を転化させた情景、切なる願いではないか。


(写真は『新国立美術館/マグリット』展・図録より)


『城』2483。

2016-11-16 06:12:53 | カフカ覚書

「そう、お城の影響ですわ」と、おうむがえしに言ったのは、アマーリアだった。気づかないうちに中庭からはいってきていたのであった。「お城の話をなさっていらっしゃいましたの。あいかわらず仲よくすわっているのね。


☆「閉ざされた先祖の擁護です」おうむがえしにアマーリアが言った。気づかないうちに長く寝たきりの両親がハロー(死の入口)から入ってきたのだった。死を物語っていましたの。いつも一緒なんですね。