ドル安円高が進むのか？：WSJ紙記事紹介ー学校で教えてくれない経済学

WSJ紙電子版（４月１７日）に、たまたまかもしれないが、ドル先安を警戒する記事が２本掲載されていた。ひとつは産油国のドル売り、今ひとつは日本の長期金利の急騰からくるドル離れを予見している。

最初の記事は、産油国のドル離れがドル安を進めるとの指摘である。Mark　Whitehouse記者は、米ドルの先行きを予測することは至難の業であるが、大胆な予測をすれば、それはオイルダラーが決めるだろうと一部のエコノミストの見方を紹介している。

ここ１～２年での原油相場の急騰で、中東、ラテンアメリカ、ロシアの輸出業者の手の中へ巨額のドルがシフトした。それがグローバルマーケットを潤した。その結果、ドル相場堅調を支援した。ところが、米国の赤字拡大を見越して、ドルからユーロなど手持ち外価の多角化の動きが芽生え始めた。

Citigroupのあるエキスパートは、年末までに、１ドル＝108円、１ユーロ＝1.28ドルを予測する。大方のエコノミストのコンセンサスでも、１ドル＝109.2円、１ユーロ＝1.25ドルへドル安が進むと見ている。

先週末のNY原油市場で、WTI相場は、バレル69.32ドルを記録した。米財務省の最新データでは、主要産油国の収入は2005年、7,000億ドルを越えた。その結果、産油国の保有外貨高は、2002年末の4,000億ドルから2005年9月末で7,000億ドルに達した。

ところが米国議会の外国人によるM&Aの動きを規制する機運にあること、外国人の米ドル建て資産が今年1月時点で一年前の1,000億ドルが一挙に500億ドルまで減少した、UAE,カタール政府の保有外価をドルから他通貨へ切り替え発表がドル先安を説明している。

いまひとつの記事は、日本の長期金利上昇がドル安を進める。Justin　Lahart記者と林ゆか記者連名の記事によると、日本の長期金利が先週末1.98％まで急騰してきた。早ければ夏場にもゼロ金利政策が解除される事態になれば、日本の長期金利上昇は加速化するから、ドル資産を売り，売った資金で日本国債買いが起こり、ドル安が進むと予測している。

日本生命は、現在4,000億ドルの資産を運用しているが、ポートフォリオに日本国債を4月新年度入りから340億ドル追加した。その結果為替リスク負担が17億ドル減る。円資産を増やすことは当社の基本政策であるとの日本生命のスポークスマンの話を紹介している。

円安が進むと見る評論家は多い。しかし、日本生命が円資産を増やし、産油国はドル資産を減らす。金持ちの行動を見ている方が下手な解説を聞いているよりよほど勉強になる。（了）

江嵜企画代表・Ken