-和方鍼灸友の会-
多賀大社フォーラム ’07
》 ご 案 内 《
会 期:平成19年9月1~2日(土~日)
会 場:多賀大社 参集殿
〒522-0341 滋賀県犬上郡多賀町多賀
参集殿直通 ℡0749-48-1103 FAX0749-48-2029
http://www.tagataisya.or.jp
参加費:1・2日とも;28,000円
①受講料 ②1日:懇親会費 ③2日:昼食代 ④記念品代の総額です。
※ 宿泊は各個人でご予約下さい。(社)彦根観光協会;宿泊のご案内
http://www.hikoneshi.com/syukuhaku_annai/index.html
参加費:2日のみ;18,000円
① 受講料 ②2日:昼食代 ③記念品代の総額です。
和方鍼灸友の会入会金:10,000円
締 切:8月17日 郵便振替にてご入金下さい
記号番号:00130-5-351212 名義:和方鍼灸友の会
連絡先: 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2‐14‐4 IKビル2F
(有)六然社内 和方鍼灸友の会事務局 tel/fax 03-6279-5101
記念品:
①『多賀法印流医書集成』第4集 A4コピー版
※第1・2・3集は実費(各5,000円)にて頒布いたします。
②沢庵禅師讃・老子騎牛図 ポスター
主催:和方鍼灸友の会/後援:多賀大社・六然社・亜東書店
― プログラム ―
【9月1日】…………………………………………………………
10:30 サプライズ企画 「来なきゃ損する本チャン前」 演題・演者未定
12:00 受付
12:30 開会の辞 六然社主 寄金 丈嗣
13:00 招待講演1「陰陽五行のサイエンス」
京都大学人文科学研究所教授 武田 時昌
14:15 休憩(本殿に移動)
14:30 「多賀法印」慰霊・「弥曽以知」入魂式
15:00 休憩(参集殿に移動)
15:15 招待講演2「日本仏教史からみた禅宗と沢庵禅師」
慶應義塾大学講師 正木 晃
16:30 基調講演1「医術・武術の“名人”論」
六然社主 寄金 丈嗣
17:15 休憩
17:30 ショート・ディスカッション「“名人”について語る」
司会:寄金 丈嗣
◎ 中国の名人について …… 新城 三六 × 井手紀公生
◎ 日本の名人について …… 大浦 慈観 × 長 野 仁
18:30 休憩(参集殿1階大広間に移動)
18:45 懇親会(参集殿1階大広間)
【9月2日】…………………………………………………………
ボーダレス・メディスン
~垣根を越えた臨床実践と研究体勢~
9:00 受付
9:30 基調講演2「沢庵禅師“鍼科三部書”」
和方鍼灸友の会主宰 長野 仁
10:15 基調講演3「口腔からのメッセージ」
ヒロ歯科院長 高澤 博幸
11:00 休憩
11:15 招待講演3「陰陽五行思想と中国伝統医学」
駒澤大学名誉教授 中村 璋八
12:30 昼休憩
13:30 招待講演4「臨床心理学からみた増永静人の経絡指圧」
京都文教大学臨床心理センター所長 濱野 清志
14:45 休憩
15:00 メイン・ディスカッション 《合の手》 長野 仁 × 高澤 博幸
「 気 心 仏 ~見えざる“何か”を追い求めて~」
《語り手》 武田 時昌 × 濱野 清志 × 正木 晃
16:30 閉会の辞 長野 仁
ご あ い さ つ
しばしば「どの研究会や勉強会に参加したら一番ためになりますか?」と聞かれる。いちおう「タメになる?ダメになる?どっち」と、おチャラけてみせる。そして、「とりあえず参加してからでないと良し悪しは分からないけどな~」とはぐらかすことにしているが、「何はともあれ自分の目で確かめてみよう!という行動力がない時点で終わってるんだけどな~」と、心でつぶやいている。急がば回れ、効率的で経済的な“ムシ”のいい方法など、鍼灸に限らずどこにもないのである。
「多賀フォー」も残すところ2回となった。惰性的で無意味な継続を嫌って全5回と区切ってスタートしたのはいいが、いざ折り返し地点を過ぎてみると、今度は店じまいのために無理やり開催するような気分になってきてモチベーションが著しく低下し、今回は中止しようかとも考えたが、持ち前の“直前力”が発現してマンネリ化を防ぐ企画が陸続と湧きあがり、気を取り直してようやくご案内となった次第である。
◎鍼灸師は深海魚である
かつて挨拶文の中で、鍼灸師の理論と技術の成熟過程をガラパゴス現象になぞらえたことがある。中央集権的でない日本の鍼灸界において、たまたま受けた治療、たまたま読んだ本、たまたま入った学校、たまたま参加した勉強会……、偶然に偶然をかけあわせた理論と技術が、たまたま開業した土地に適応していると、10人に1人とも、100人に1人ともいわれる生存競争に生き残れるというわけである。
今回は、鍼灸師を深海魚に喩えて説明しようと思う。すなわち「鍼界吾」である。
日の光の届かぬ深海(鍼界)は、ダーク・サイドであり、アンダー・グラウンドである。まず、職業に鍼灸を選んだ時点で、日の目を見ることなど諦めねばならない。
そして、深くなればなるほど、餌に乏しく、圧力が高い。鍼界を支えているのは、国民の3パーセントに過ぎないし、医界における不遇さ加減は、国家資格随一であろう。
過酷な環境に適応するには、ガラパゴス現象のごとく、独自の進化を遂げねばならない。その結果、グロテスクとなり、珍種・新種の宝庫となる。私を含め、どこか変なヤツでなければ、生存競争を勝ち抜くことなど出来やしない。
かつて、間中喜雄博士は「奇人 変人 半狂人 大歓迎 ―但し一芸に秀でた者―」と看板に掲げていたそうだが、実は、前の三つではなく、但し書きだけが肝心なのだ。要するに、鍼灸をチョイスした時点で奇人・変人なのだから、そこから半分だけ真っ当に狂いなさい、ということである。
グロいだけの珍種・新種は、お荷物どころか迷惑千万である。我々の目指すところは、肝も身も旨くて出汁もよい鮟鱇(アンコウ)であろう。すなわち、「案・効」、「安・乞」である。独自に考案した理論と即効かつ持続する技術を備えた鍼灸師。安心して治療を乞われ患者さんに慕われる鍼灸師。
アンコウの代表格・新城三六先生は、多賀フォーを契機に実践塾を開催されているし、私は井村宏次先生との邂逅から理論面・技術面とも再構築中なので、実技公開は行わず、黒忍者こと寄金丈嗣先生を軸に、“名人”について討議することとした。これは、武勇伝や思い出話というよりも、アンコウの解体なのであり、シビアな話が飛び交うこと必至だろう。
◎日本仏教
5回連続参加をお願いしている正木晃先生には、覚鑁上人に引き続き、沢庵禅師についてご講演いただくこととした。覚鑁も沢庵も、日本の医学思想に少なからぬ影響を及ぼした高僧である。今回は、日本仏教史において禅宗はどのような位置づけにあるのかご説明していただいてから、江戸期の代表的な禅僧である沢庵その人にスポット・ライトを当てていただけるようご依頼している。
もう少し言ってしまうと、最終回は、邪教と蔑視される立川流の真言密教に関してお願いする予定である。結論まで言ってしまうと、全5回の講演を「鍼灸師のための宗教学講座」のような、1冊の本にまとめたいと考えている。チベット密教から立川流へ(総論)、覚鑁・沢庵から岡田茂吉へ(各論)という流れのある、鍼灸師向けの著述は皆無であるし、多賀フォーの記念碑にもなると思われるからである。
また、沢庵には鍼灸に関する著述も存在するので、その点については私が紹介する。本当は、数年前に『沢庵禅師鍼科三部書』として出版されていたはずなのであるが、不徳の致すところである。もちろん今回もさわりだけである。
◎中国哲学
何といっても、今回の目玉は陰陽五行研究の世界的権威であられる中村璋八先生のご講演である。伝統に立脚する鍼灸師であれば、陰陽五行説を抜きにして理論も実践もありえないのだが、では、陰陽五行説がいかに形成されて、医学に吸収されていったのか、ということになると、ほとんど無知といってよい。現代医学が数学・物理学・生物学・化学・工学などに支えられているように、中国の伝統医学は中国古代の自然哲学を踏まえているのである。限られた時間ではあるが、壮大な中国哲学史の一端をご披露していただく。
中村先生と共に『易のニューサイエンス』を翻訳された武田時昌先生は、京大人文研・中国科学史班(藪内清スクール)の直系であるが、何を隠そう、私をダーク・サイドの深遠へと陥れた1人である。武田先生とは一面識もなかったが、大学4年の夏休み、遠い伝手を使ってようやくアポを取り、赴任先の信州大学を訪問したのが初対面である。ふと気がつけば、あの時の先生よりも年長の私がここにいて、深海魚生活17年目を実感しつつ、今度は私が学生会員を地獄へ引きずり込む番だと自覚するのであった。でも、どうせなら張本人に引導を渡してもらうほうがよかろう。演題は、目下の研究テーマである「陰陽五行のサイエンス」とさせていただいたが、果たしてどこで脱線し、どこに不時着するやら、終わってみなければ誰にも分からない。恐らく本人にも。阪神という名の「神」に祈るばかりである。
◎臨床心理学
ひょんなことから面識を得た濱野清志先生は、ユング派心理療法の立役者であり前文化庁長官である河合隼雄先生の高弟である。現在、京都文教大学の臨床心理センター所長としてクライアントのカウンセリングに臨み、教授として学生に教鞭を執っておられる。ところが、多忙極まりないにもかかわらず、夜な夜なカルチャー・センターに通って増永静人師の経絡指圧を勉強中という変り種なのである。多賀フォー向きの逸材と出会ってしまったからには、一席設けるのが礼儀というもの。“気”に着目した心身関係の議論にご期待いただきたい。なお、この講演は増永師の隠れた名著『臨床心理学序説』の復刊準備も兼ねている。
◎矯正歯科学
新城先生のご推挙により、急遽ご講演をお引き受けいただいたヒロ歯科院長の高澤博幸先生は、異色の歯科医師である。全身の一部分としての口腔という観点から、歯科領域の質的転換を図るべく臨床に携わっておられる。簡単に言えば、歯の疾患は全身に悪影響を及ぼし、歯の治療は全身に好影響を与えるということである。医学と歯学の境界線はなんら意味を持たないというわけだ。反対に言えば、全身の歪みは歯に悪影響を及ぼし、歪みの改善は歯にも好影響を与えるということでもある。微妙な歪みの改善は、西洋医学よりも東洋医学、とりわけ鍼灸の中に優れた技法が存在するというわけだ。新城先生との接点はここにある。境界なき医療を主張される高澤先生に、口腔からのメッセージを届けていただこう。
◎ボーダレス・メディスン
第2回・第3回と中断していたディスカッションだが、波長のあいそうな先生が揃ったので再開することとした。武田先生は“気”、濱野先生は“心”、正木先生は“仏”、それぞれの先生が「目に見えない“何か”を追い求めて」いらっしゃるのだから、それをそのままテーマに掲げ、鍼灸と各分野の関連を深めるような、鍼灸の外堀を埋めるような議論を展開していただこうと考えている。マイク・ハナサーズの面々ゆえ収拾がつくのかどうか不安もよぎるが、参加者各位は時間の許す限りご堪能いただければ幸甚である。
◎嬉しくない値上げのお知らせ
たった150名ほどの参加者のために、これだけのラインナップである。さらに、演者・演題は未定だが、特に学生会員をターゲットとしたサプライズ企画を初日の午前中に用意している。しかも、またまた冊子とポスターのダブル記念品である。これはどう考えても、参加費据え置きは不可能である。
ラストは、アンジェラ風で。いっこうに仕上がらない私の著作を当て込んでいる六然社の自腹も、そろそろ限界。ということで、嬉しくない値上げを敢行することになりまぴた。くれぐれもご理解の上、奮ってご参加下さいますよう、心よりお願い申し上げまぷ。
2007年7月吉日 和方鍼灸友の会主宰 長 野 仁 謹識
※最新情報は、ブログ 「六然の小窓」 にて。
多賀大社フォーラム ’07
》 ご 案 内 《
会 期:平成19年9月1~2日(土~日)
会 場:多賀大社 参集殿
〒522-0341 滋賀県犬上郡多賀町多賀
参集殿直通 ℡0749-48-1103 FAX0749-48-2029
http://www.tagataisya.or.jp
参加費:1・2日とも;28,000円
①受講料 ②1日:懇親会費 ③2日:昼食代 ④記念品代の総額です。
※ 宿泊は各個人でご予約下さい。(社)彦根観光協会;宿泊のご案内
http://www.hikoneshi.com/syukuhaku_annai/index.html
参加費:2日のみ;18,000円
① 受講料 ②2日:昼食代 ③記念品代の総額です。
和方鍼灸友の会入会金:10,000円
締 切:8月17日 郵便振替にてご入金下さい
記号番号:00130-5-351212 名義:和方鍼灸友の会
連絡先: 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2‐14‐4 IKビル2F
(有)六然社内 和方鍼灸友の会事務局 tel/fax 03-6279-5101
記念品:
①『多賀法印流医書集成』第4集 A4コピー版
※第1・2・3集は実費(各5,000円)にて頒布いたします。
②沢庵禅師讃・老子騎牛図 ポスター
主催:和方鍼灸友の会/後援:多賀大社・六然社・亜東書店
― プログラム ―
【9月1日】…………………………………………………………
10:30 サプライズ企画 「来なきゃ損する本チャン前」 演題・演者未定
12:00 受付
12:30 開会の辞 六然社主 寄金 丈嗣
13:00 招待講演1「陰陽五行のサイエンス」
京都大学人文科学研究所教授 武田 時昌
14:15 休憩(本殿に移動)
14:30 「多賀法印」慰霊・「弥曽以知」入魂式
15:00 休憩(参集殿に移動)
15:15 招待講演2「日本仏教史からみた禅宗と沢庵禅師」
慶應義塾大学講師 正木 晃
16:30 基調講演1「医術・武術の“名人”論」
六然社主 寄金 丈嗣
17:15 休憩
17:30 ショート・ディスカッション「“名人”について語る」
司会:寄金 丈嗣
◎ 中国の名人について …… 新城 三六 × 井手紀公生
◎ 日本の名人について …… 大浦 慈観 × 長 野 仁
18:30 休憩(参集殿1階大広間に移動)
18:45 懇親会(参集殿1階大広間)
【9月2日】…………………………………………………………
ボーダレス・メディスン
~垣根を越えた臨床実践と研究体勢~
9:00 受付
9:30 基調講演2「沢庵禅師“鍼科三部書”」
和方鍼灸友の会主宰 長野 仁
10:15 基調講演3「口腔からのメッセージ」
ヒロ歯科院長 高澤 博幸
11:00 休憩
11:15 招待講演3「陰陽五行思想と中国伝統医学」
駒澤大学名誉教授 中村 璋八
12:30 昼休憩
13:30 招待講演4「臨床心理学からみた増永静人の経絡指圧」
京都文教大学臨床心理センター所長 濱野 清志
14:45 休憩
15:00 メイン・ディスカッション 《合の手》 長野 仁 × 高澤 博幸
「 気 心 仏 ~見えざる“何か”を追い求めて~」
《語り手》 武田 時昌 × 濱野 清志 × 正木 晃
16:30 閉会の辞 長野 仁
ご あ い さ つ
しばしば「どの研究会や勉強会に参加したら一番ためになりますか?」と聞かれる。いちおう「タメになる?ダメになる?どっち」と、おチャラけてみせる。そして、「とりあえず参加してからでないと良し悪しは分からないけどな~」とはぐらかすことにしているが、「何はともあれ自分の目で確かめてみよう!という行動力がない時点で終わってるんだけどな~」と、心でつぶやいている。急がば回れ、効率的で経済的な“ムシ”のいい方法など、鍼灸に限らずどこにもないのである。
「多賀フォー」も残すところ2回となった。惰性的で無意味な継続を嫌って全5回と区切ってスタートしたのはいいが、いざ折り返し地点を過ぎてみると、今度は店じまいのために無理やり開催するような気分になってきてモチベーションが著しく低下し、今回は中止しようかとも考えたが、持ち前の“直前力”が発現してマンネリ化を防ぐ企画が陸続と湧きあがり、気を取り直してようやくご案内となった次第である。
◎鍼灸師は深海魚である
かつて挨拶文の中で、鍼灸師の理論と技術の成熟過程をガラパゴス現象になぞらえたことがある。中央集権的でない日本の鍼灸界において、たまたま受けた治療、たまたま読んだ本、たまたま入った学校、たまたま参加した勉強会……、偶然に偶然をかけあわせた理論と技術が、たまたま開業した土地に適応していると、10人に1人とも、100人に1人ともいわれる生存競争に生き残れるというわけである。
今回は、鍼灸師を深海魚に喩えて説明しようと思う。すなわち「鍼界吾」である。
日の光の届かぬ深海(鍼界)は、ダーク・サイドであり、アンダー・グラウンドである。まず、職業に鍼灸を選んだ時点で、日の目を見ることなど諦めねばならない。
そして、深くなればなるほど、餌に乏しく、圧力が高い。鍼界を支えているのは、国民の3パーセントに過ぎないし、医界における不遇さ加減は、国家資格随一であろう。
過酷な環境に適応するには、ガラパゴス現象のごとく、独自の進化を遂げねばならない。その結果、グロテスクとなり、珍種・新種の宝庫となる。私を含め、どこか変なヤツでなければ、生存競争を勝ち抜くことなど出来やしない。
かつて、間中喜雄博士は「奇人 変人 半狂人 大歓迎 ―但し一芸に秀でた者―」と看板に掲げていたそうだが、実は、前の三つではなく、但し書きだけが肝心なのだ。要するに、鍼灸をチョイスした時点で奇人・変人なのだから、そこから半分だけ真っ当に狂いなさい、ということである。
グロいだけの珍種・新種は、お荷物どころか迷惑千万である。我々の目指すところは、肝も身も旨くて出汁もよい鮟鱇(アンコウ)であろう。すなわち、「案・効」、「安・乞」である。独自に考案した理論と即効かつ持続する技術を備えた鍼灸師。安心して治療を乞われ患者さんに慕われる鍼灸師。
アンコウの代表格・新城三六先生は、多賀フォーを契機に実践塾を開催されているし、私は井村宏次先生との邂逅から理論面・技術面とも再構築中なので、実技公開は行わず、黒忍者こと寄金丈嗣先生を軸に、“名人”について討議することとした。これは、武勇伝や思い出話というよりも、アンコウの解体なのであり、シビアな話が飛び交うこと必至だろう。
◎日本仏教
5回連続参加をお願いしている正木晃先生には、覚鑁上人に引き続き、沢庵禅師についてご講演いただくこととした。覚鑁も沢庵も、日本の医学思想に少なからぬ影響を及ぼした高僧である。今回は、日本仏教史において禅宗はどのような位置づけにあるのかご説明していただいてから、江戸期の代表的な禅僧である沢庵その人にスポット・ライトを当てていただけるようご依頼している。
もう少し言ってしまうと、最終回は、邪教と蔑視される立川流の真言密教に関してお願いする予定である。結論まで言ってしまうと、全5回の講演を「鍼灸師のための宗教学講座」のような、1冊の本にまとめたいと考えている。チベット密教から立川流へ(総論)、覚鑁・沢庵から岡田茂吉へ(各論)という流れのある、鍼灸師向けの著述は皆無であるし、多賀フォーの記念碑にもなると思われるからである。
また、沢庵には鍼灸に関する著述も存在するので、その点については私が紹介する。本当は、数年前に『沢庵禅師鍼科三部書』として出版されていたはずなのであるが、不徳の致すところである。もちろん今回もさわりだけである。
◎中国哲学
何といっても、今回の目玉は陰陽五行研究の世界的権威であられる中村璋八先生のご講演である。伝統に立脚する鍼灸師であれば、陰陽五行説を抜きにして理論も実践もありえないのだが、では、陰陽五行説がいかに形成されて、医学に吸収されていったのか、ということになると、ほとんど無知といってよい。現代医学が数学・物理学・生物学・化学・工学などに支えられているように、中国の伝統医学は中国古代の自然哲学を踏まえているのである。限られた時間ではあるが、壮大な中国哲学史の一端をご披露していただく。
中村先生と共に『易のニューサイエンス』を翻訳された武田時昌先生は、京大人文研・中国科学史班(藪内清スクール)の直系であるが、何を隠そう、私をダーク・サイドの深遠へと陥れた1人である。武田先生とは一面識もなかったが、大学4年の夏休み、遠い伝手を使ってようやくアポを取り、赴任先の信州大学を訪問したのが初対面である。ふと気がつけば、あの時の先生よりも年長の私がここにいて、深海魚生活17年目を実感しつつ、今度は私が学生会員を地獄へ引きずり込む番だと自覚するのであった。でも、どうせなら張本人に引導を渡してもらうほうがよかろう。演題は、目下の研究テーマである「陰陽五行のサイエンス」とさせていただいたが、果たしてどこで脱線し、どこに不時着するやら、終わってみなければ誰にも分からない。恐らく本人にも。阪神という名の「神」に祈るばかりである。
◎臨床心理学
ひょんなことから面識を得た濱野清志先生は、ユング派心理療法の立役者であり前文化庁長官である河合隼雄先生の高弟である。現在、京都文教大学の臨床心理センター所長としてクライアントのカウンセリングに臨み、教授として学生に教鞭を執っておられる。ところが、多忙極まりないにもかかわらず、夜な夜なカルチャー・センターに通って増永静人師の経絡指圧を勉強中という変り種なのである。多賀フォー向きの逸材と出会ってしまったからには、一席設けるのが礼儀というもの。“気”に着目した心身関係の議論にご期待いただきたい。なお、この講演は増永師の隠れた名著『臨床心理学序説』の復刊準備も兼ねている。
◎矯正歯科学
新城先生のご推挙により、急遽ご講演をお引き受けいただいたヒロ歯科院長の高澤博幸先生は、異色の歯科医師である。全身の一部分としての口腔という観点から、歯科領域の質的転換を図るべく臨床に携わっておられる。簡単に言えば、歯の疾患は全身に悪影響を及ぼし、歯の治療は全身に好影響を与えるということである。医学と歯学の境界線はなんら意味を持たないというわけだ。反対に言えば、全身の歪みは歯に悪影響を及ぼし、歪みの改善は歯にも好影響を与えるということでもある。微妙な歪みの改善は、西洋医学よりも東洋医学、とりわけ鍼灸の中に優れた技法が存在するというわけだ。新城先生との接点はここにある。境界なき医療を主張される高澤先生に、口腔からのメッセージを届けていただこう。
◎ボーダレス・メディスン
第2回・第3回と中断していたディスカッションだが、波長のあいそうな先生が揃ったので再開することとした。武田先生は“気”、濱野先生は“心”、正木先生は“仏”、それぞれの先生が「目に見えない“何か”を追い求めて」いらっしゃるのだから、それをそのままテーマに掲げ、鍼灸と各分野の関連を深めるような、鍼灸の外堀を埋めるような議論を展開していただこうと考えている。マイク・ハナサーズの面々ゆえ収拾がつくのかどうか不安もよぎるが、参加者各位は時間の許す限りご堪能いただければ幸甚である。
◎嬉しくない値上げのお知らせ
たった150名ほどの参加者のために、これだけのラインナップである。さらに、演者・演題は未定だが、特に学生会員をターゲットとしたサプライズ企画を初日の午前中に用意している。しかも、またまた冊子とポスターのダブル記念品である。これはどう考えても、参加費据え置きは不可能である。
ラストは、アンジェラ風で。いっこうに仕上がらない私の著作を当て込んでいる六然社の自腹も、そろそろ限界。ということで、嬉しくない値上げを敢行することになりまぴた。くれぐれもご理解の上、奮ってご参加下さいますよう、心よりお願い申し上げまぷ。
2007年7月吉日 和方鍼灸友の会主宰 長 野 仁 謹識
※最新情報は、ブログ 「六然の小窓」 にて。