ベルギーシリーズ(アントワープ行き急行車内)
江嵜企画代表・Ken
ベルギー行きが決まった直後からアントワープ動物園を
是非尋ねたいと思っていた。日本で、今、人気ナンバーワンの
旭山動物園が、アントワープ動物園をまねて作られたと聞いていた
からである。
世の中見ると聞くとは大違いであることはよくあるが、
動物園の入り口からはじまり、園内をくまなく回らなくても、
規模からして、彼我の差は決定的だと分かった。
日本流なら駅から徒歩0分と書くだろう。広大な動物園の
一角にアントワープ中央駅があるといっても決して大げさでない。
列車が時間通り着いたこともあり、開園が10時で、5分待った。
何を見るのかと、旅の仲間の一人から聞かれたから、とにかく、
アントワープ動物園の雰囲気に、静かに浸りたいんだと、
後から恥ずかしくなったほど、気色ばんで答えた。
入り口で大人3人と言うと、何歳かと、英語で聞かれた。
一人が82歳、76歳、そして筆者が69歳と言うと、
40.5ユーロだという。
後でキップの裏をしげしげ見ると、「60+、シニア」
料金と書いてあった。つまり、60歳以上はシニアの
割引料金なのだ。正規なら一人15ユーロだから
10%割り引いてくれた勘定である。
日本なら外国人に対して、どういう態度をとるのだろうと、つまらぬ
想像をしながら、園内に入った。日本では、仮に、割引制度が
あっても、年齢を証明するエビデンスを要求し兼ねないことは
十分想像できる。
今回の旅のリーダーの佐藤正人さんによれば、そもそも、
お年寄りが動物園へ、孫や幼児を連れて来易いように配慮
した料金制度をとっているのだそうだ。
園内で祖母ちゃんだろう、孫に語りかけながら、それは楽しそうに
園内をゆっくり回る光景に出くわした。それが一組でないのだ。
帰りに、入り口近くの、休憩を兼ねたキャファテリア(簡易食堂)に
入った。子供が安心しえ遊べる遊戯コーナーが店内に
用意されていた。
入園直後にたまたま、象とキリンの獣舎の前を通った。入ってもいいかと
英語で聞いたら、ウインクをしながら、ファイブ・ミニッツという。象舎を
一回りして時間稼ぎしたら、オーケーだった。
係りの男が、象に水をかけ始めたタイミングだった。象が、次はここだ、
つぎはここだと、水をかける場所を催促している。それに礼儀正しく、
答えてやっている姿が、びん、びん伝わってきて、実に、すがすがしい
気分になった。
らくだが塀を越えて来るかと思うまで近くで見られた。至近距離で
動物を観察できるのがアントワープの「売り」なのだろう。
シベリアトラが水郷を一跨ぎして、今にも飛び掛ってきそうで、
実に迫力があった。
手入れが行き届いているからでもあろうが、動物たちが伸び伸び
生活しているせいか、シベリアトラもライオンも鬣(たてがみ)が
艶々していた。
動物も人も同じで、檻に入れられて生きていると、艶がなくなる。
年齢ではない。(了)