堀江環喜さん大いに語る
江嵜企画代表・Ken
堀江環喜さんから夏ごろだったか、ハガキで時間があればいかがですかと、大阪府立大学公開講座、11月17日と12月6日、2回の出演のご案内をいただいていた。11月は所要があり行けなかったが、昨日6日、大阪府立大学、白鷺Uホールでの「蛇のファッション考」と題する講義60分間、久しぶりの環喜ブシを堪能した。
トレードマークの赤のドレス、かかとの高いハイヒール、胸元をスカ―フでまとめたファッションでしっかりと決めておられた。プロジェクターは一切なし。舞台真ん中で、マイク片手に、13時20分までとの制限時間ドンピシャリ、よどみなく話し切った。講義の中身は、最近出版された「蛇のファッション考」(ア-トダイジェスト社、03-5351-7612)に詳しいと,,さりげなく、本のPRをしておられた。やや演壇近めに席を取り、会場の様子をスケッチした。今回の公開講座は、大阪府立大学女性学研究センター主催だった。
講義冒頭、堀江教授は「130ケ国で日本は101番目。何の事かおわかりですか?」と問いかけた。答えは「世界男女平等、国際基準である。子供の頃、母親からは、勉強しろと一度も言はれることなく育てられた。ただ。クラスで半分より少し上の成績はとれと、父親には言われた。国際基準では、いかに日本では、女性が平等に扱われていないかを示す一つの指標である。しかし、日本人一般はこのことにほとんど気付いていない。そのこと自体、実に怖ろしい。」と、落語でいう「枕」に使って本論、ヘビの話に入った。
「古代日本人は、蛇を祖先神として信仰していた。」と「日本人の死生観―蛇転生する祖先神」(1995年)を紹介した。吉野氏によれば、死者に「△の額当て」をつける風習。三角△は蛇のウロコを表す。道成寺の清姫の着物の柄は全て三角である。北条氏の家紋「三つの鱗」も江の島弁財天から北条時政が授かった。江の島弁財天の正体は大蛇との伝承があると、と日本人と蛇とのかかわりにふれた。
弁財天だけでなく白い蛇は神様と見る風習がある。花と蛇の関係では蛇は男性のシンボルと結び付ける。女性と組み合わせて蛇をエロチックに見る。その一方、蛇は有益だ、と実用性と結び付ける。蛇がネズミを獲るのでありがたいとして、米蔵や農家の天井に蛇がよくいた。米蔵守ってくれる。裕福にしてくれる。豊穣のシンボル。お金と結び付く。それが弁財天の「財」の文字に出ている。
蛇には、グロテスクというイメージがあった。ただ、最近、かわいいキャラクターの蛇がコミカルの世界にも登場している。子供のころ、蛇のことを祖母は「くちな」と呼んでいた。「口縄(くちなわ)」の「わ」がとれた。神社のしめ縄。蛇は大きくなると龍になる。蛇は脱皮することから再生のシンボルにもされた。川は蛇行することから水の神様とされた。弁財天から芸事の神様にもなる。
蛇はイブを誘惑する、聖書「創世記」第三章へ話進んだ。蛇を踏む聖母マリア像がある。カラヴァッジョ描く「蛇の聖女」という絵がある。欧米では、聖書の影響で、蛇に対してより悪魔的なイメージが伴うようだ。クレオパトラが蛇に乳房を噛ませ死ぬ話では、堀江さんは時間をとった。エジプト人のパイロットと神戸でたまたま会った。彼に意見を聞いた。調べて返事すると言っていたが何も答えはない。自分ではおかしい、作られた話だと思っている。映画「クレオパトラ」で、エリザベステ―ラ―には豊満な胸は出せない。彼女は、代わりに蛇に手を噛ませていた。
蛇が気味悪いという典型では、ルーベンスが描いた「メデュ―サの頭部」という絵がある。切り殺されたメデュ―サの頭から抜け出た蛇たちがうごめいていて気味悪い。気味悪いということを逆利用して、有名ブランドのアイキャッチャーとしてしばしば登場している。ドイツ雑誌「デルジュビーゲル」の表紙は緑の大蛇が裸の美女に巻きついている。演出のために蛇を使った。グロテスクでは蛇女もそうだ。蛇よりも蛇のような女、人間の方が怖い。下半身が蛇の人形。人魚もこの系列に入るだろう。60分間、息つく暇なし喋り続けた堀江環喜さんのお話は,限られた紙数では書き切れない。
彼女の肩書は大阪府立大学教授である。20年前に府立大とのご縁が出来た。昨年、大學の制度改正で冒頭触れた大阪府立大学女性学研究センターに移って今回の出番となったと話しておられた。多くの著書を世に出し、超多忙な日々を送られている言葉通りの名士である。堀江環喜さんとのご縁は元職場の日本化学繊維協会が出していた機関誌「化繊月報」に連載を彼女にお願いした時にはじまる。当時編集長だった野口浩さんが、ご存命なら真っ先に、本日のレポートを送るところである。(了)