甲陽学院同窓会会員総会風景
江嵜企画代表・Ken
甲陽学院同窓会会員総会が8月31日、午後1時から母校高校跡地にあるノボテル甲子園で開かれ楽しみにして出かけた。お目当ての一つは「関西人はなぜ政治が嫌いか?」の演題で乾正人、産経新聞編集長(62回生)の話を聞くことだった。
明らかな目標を持ち、人心を掌握出来るリーダーが政治家に出て来ないと国は良くならないと中学1年の時からだんだん分かってきた。関西は政治を軽視してきた。形式的には幣原喜重郎、鈴木貫太郎はいるが、関西で総理大臣になった人が一人もいないことによく表れていると口火を切った。
母校には会場の前におられる方々のように、賢い人はいる。そこが問題だと思っている。こういうことを言うと最近はツィッタ―が怖いので書かないでほしい。(筆者注:講演の中で、書かないでほしいという言葉が今回ほど繰り返し出た講演会も珍しい。実はその個所だけが面白かった。)
母校では、地歴部にいた。火遊びをやって現校長の山下正明先生にえらく叱られた。数学が全くの苦手だった。200人いた生徒の末席をうろうろしていた。数学のない大学を受験して卒業したと学校時代の話へ飛んだ。
話を戻す。今の日本の政治は俗に言う御三家、岸、吉田、鳩山家が抑えている。安倍総理も選挙区は山口だが東京で育った。そのことが東京一極を助長している。新幹線を通したといった目に見えるものだけが政治でない。目に見えないところで政治パワーが働く。
関西から総理大臣が出ていないことには根深い問題がある。豊臣が滅びた以降、関西は武士の町でない。大阪には町人の名をつけた地名が多い。関西は政治権力を意識せずに繁栄して来た。
前政権は、理屈はいいことを言った。経験のなさが災いした。官僚は優秀だが、決断できない。決断は政治家の仕事である。医者と同じで何度も臨床を積んではじめていい医者になる。今一つ政治家になるには金がかかる。特に小選挙制になってからその傾向が強まった。
それが分かってしまって立候補しなくなった。新規参入が極めて難しい。老中が支配した江戸時代と変わっていない。古い体質が残っている方がお得。これをどうにかしないと日本という国はにっちもさっちも行かない。
関西が政治嫌いなのには教育の問題もある。母校の卒業生は80%が理科系と聞いた。医者に向いてない学生が医者になる。文科系と理科系は半々が望ましいと思っている。母校からも優秀な学生が政治家になって欲しいと講演を終えた。
講演は1時間以上に及んだ。ほとんど伏字になるから書けない。講演の後、数人が質問した。「甲陽だより」で演題を見て東京から駆けつけたと前置きして「メディアは一端持ち上げておいて、手のひら返したように叩く。もう少しなんとかならぬのか。」と質問した。乾氏は「産経は現政権誕生前から支持していたのでしばらく続ける。」とかわした。
最後に現役の地方議員の後輩が質問に立った。いろいろやり取りがあったあと、乾氏は「地方自治体からめげずに国政を目指してください。」と受けた後、「(山下校長に向かって)政治が重要だと云うことを生徒に教えてやって下さい。「はだしのゲン」が批判されている。政治を二ュ―トラルに教えられる先生がいないのではないか。政治を目指す人材を育ててください。」と母校にエールを送った。
第一部 講演のあと 1階鳴尾の間から2階甲陽の間に場所を移し第二部では、喜多毅(44回生)他8名からなるSilky Cotonns バンド演奏を楽しんだ。44回、59回、69回生、ホームカミング学年が演壇に上がり記念品が贈呈された。校歌斉唱し散会した。
午前10時から同じくノボテル甲子園で開かれた甲陽史学会に出た。辻川敦、尼崎市立地域研究史料館館長(59回生)から地域史編さんの現状と問題点について話を聞いた。公文書保存、一般公開で、制度、財政面で制約が多い。図書館、公文資料館、博物館共に逆風だ。将来が心配だと話した。
余談ながら、日米繊維交渉の生々しい話はアメリカの公文書館へ行けば公に閲覧できる。日本では出来ない。公文とは何かについての認識が日本では根付いていない。乾氏の講演でも、政治が国民一人一人の命に大きな意味を持っている。そのことを学校でも教えてやって欲しいと祈るのみだ。(了)