「わからない」ことの大切さ:神戸松陰土曜講座
江嵜企画代表・Ken
神戸松陰土曜講座(6月6日:10:40~12:10)で講師の黒崎優美准教授による「わから
ない」ことの大切さ」~心理学的視座からの学習支援というタイトルに惹かれて会場
の松陰女子学院大学へ家族と出かけた。
黒崎准教授は医療や教育現場での臨床教育を経て2011年度より当大学で教鞭をとっ
ておられる。氏によれば「学ぶとは『わからない』体験に耐えていくことである。そ
の能力は生きる力に直結している」という切り口が特に印象に残った。
「赤ちゃんは『わからない』を体験できない」から話は始まった。「わからない」
ということに「共感」、「わからない」ということを「わかる」(受容)、「理解
力、耐性」が生まれるので、「わからない体験」が意味を持つと説明した。
カウンセラーが、ふん、ふん、とクライエントの話を聞いているだけでは、クライ
エントは「わからないままだ」という講師の話は、特に面白かった。「ただ聞いてや
るだけでは解決にならない」と塩崎先生は話された。
講演は神戸市灘区の子供たちへのアンケート調査で得られたデータを交えながら話
が進んだ。同調査によれば64%が「勉強は大切」と思っている。その一方で、44%が
「勉強は楽しくない」と思っている。78%は「授業は理解出来る」と思っている。
約半数が塾に通っている(平均週1~2回)。学校以外での学習時間は57%が1時間
以下である。40%が放課後などの学習支援を希望している。得意科目は何かと問うと
「体育」(23%),「英語」(22%),「国語」(13%)、「理科」(9%)などと分かれる。
苦手科目は「数学」が33%と群を抜いて多いことが分かった。
会場のスクリーンにアキラ(男性、22歳)が登場する。貧困の為に中卒後日雇いの
仕事に従事していた。通信制高校に単位を修得できないまま在籍する。
アキラは仕事と家事に追われる母に甘えられない。人を信じられない。本音で全部
を話せる人に出会っていない。小学生に戻れたら、今ある自分でさらけ出したい、勉
強も頑張りたいと話す場面が写された。
子供たちは、頑張れる場所、時間、指導を提供すれば「頑張れる」。なぜ頑張れな
いのか。頑張れるようにするために「わからない体験を出来る支援をしたい。子供た
ちが『わからない』と言えるようになることが大事だと黒崎先生は話した。
今回の講座は「学習支援」の話だった。しかし、教師と生徒の関係にとどまらず、
カウンセラーとクライエントの関係、医者と患者の関係、老人介護、終末医療、大袈
裟でなく、人生万般に通じる,人と人が、お互い同士の「こころ」と向き合うことの
大切さを教える話だと考えながら帰路についた次第である。(了)