阪神なんば線(難波→尼崎)車内風景
江嵜企画代表・Ken
8月1日の夜、さる斎場からの帰路、阪神なんば線の車内風景をスケッチしていたの
を10日目の本日、多少落ち着いたところで、ようやく彩色した。
私事で恐縮であるが、その日の未明、家内の実弟(68)が入院先の病院で肺炎で他
界するハプニングが起こった。義弟がなくなる3日前に入院するまで101歳の義母と同
居していたこともあり、特にそのあとは怒涛の1週間だった。
肺炎は怖い病気だとは聞いていた。ほぼ月1回のタイミングで高齢の義母を慰問す
る形で、短時間ではあったが、義弟とも言葉を交わしていた。素人の浅はかさ、少な
くとも外見では、かくも容態が急変する状況に至っていたとは、気づかなかった。反
省しきりである。
話を本題に戻す。車内がスマホオンパレードである点はいつもと変わらない。服装
はさすが夏らしくなっている。それぞれがそれぞれの色スタイルの手荷物を膝に抱え
持っている。たまたまこの日は全員ご婦人だった。夜8時を過ぎていたが、珍しく寝
ている姿はなかった。ただひたすらスマホをいじっていた。
JRでの車内風景を最近2枚描いた。一枚は敬老シート前に座った小学校高学年と思
しき少女二人。もう一枚は小学入学前と思しき少女と祖母さんの二人連れをスケッチ
した。いずれもスケッチブックから切り取って渡したから手元にない。
最初の二人は新大阪から新幹線で岡山に行く途中だと少女二人の話を聞くとはなし
に聞いていてわかった。これがあなた、隣が妹さん。お父さん、お母さんを絵に入れ
たと説明した。筆者の隣の座席に座っていた母親は「最近、新幹線で怖い事故があっ
た。しかし、子供だけで冒険させるのもいい経験になると思って、新大阪まで送りに
来た」と話してくれた。
今一枚は、お祖母さんと芦屋駅から乗るなりずっと楽しそうに話し続けていた。大
阪駅で降りなかったが話の中身からどこまで乗るかわからなかった。最初のスケッチ
は渡すなりニコッと笑って肩に掛けていたポセットに2枚にたたんで目にも止まらぬ
速さでしまい込んだ。孫二人に代って母親が礼をいった。
お祖母さんと二人連れの少女に渡したスケッチをお祖母さんがニコニコしながら、
あそこのおじちゃんが描かはったんよ、よかったね、よかったね、と孫に何度も話し
かけていた。あの「お・じ・い・ち・ゃ・ん」が描いたと、聞こえなかったことに勝
手に喜んでいる次第である。
20数年前の古い話だが、大手商社のえらいさんだった中村龍平さんが、いつも、
携帯絵の具とスケッチブックを手持ちしておられた。気が向けば即興で描くのだと見
せていただいたことがあった。
自分も中村さんのように描けたらどんなに楽しいだろうなと思ったものだ。スケッ
チの話になるといつも中村龍平さんのことを思い出す。(了)