後頭部の筋肉
オステで頭蓋骨を整える研究をしていますが、面白いことがありました。
それは、頭蓋骨だけを矯正しても、元に戻りやすいということです。
つまり、その場では治ったように思えても、すぐに元に戻ってしまうということです。
それは何故かと言うと、運動の中心が腰部になっているし、頭蓋の歪みは上のイラストに描いたように「大後頭直筋・小後頭直筋・上斜角筋・下斜角筋」等が深く関わっているからで、腰部に歪みがあったり、後頭部の筋肉に緊張があったりすると、治療後に歩いただけで、歪みが波及して元に戻ってしまうのです。
たとえば、最初に顔の中心線や頭蓋縫合の歪みを診ておきます。
その後、脊椎の歪みの検査をしてから、誰でもできる、非常に簡単な方法で脊椎の歪みを矯正したとします。
そして頭蓋骨を診ますと、多少矯正されています。
(非常に簡単な矯正方法は、 今度の臨床実践塾 で実技公開します)
ですから、頭蓋骨の矯正は、腰部、頸椎、後頸部の筋肉などの矯正も一緒にするほうがいいということになります。
腰部(骨盤・股関節・仙腸関節)の矯正は、いろいろな方法があるので、各自の得意な方法で矯正してもらい、その後に後頭部の筋肉を矯正します。
後頭部の筋肉を矯正するには、頸椎の調整も必要ですので、頸椎の調整と同時に頚部の筋肉も調整する手技を加える必要があります。
頸部の歪みを診る簡単な方法は、首を左右前後に動かして、動きの悪い角度があれば、多くの場合、反対側の筋肉に過緊張があります。
前に倒しにくければ、後頸部から胸椎上部に過緊張があり、後に倒しにくければ、胸鎖乳突筋などに過緊張があります。
捻れを診るには、胸椎上部から頚椎の歪みを診てから判断するのですが、右に捻じったときに捻じり難いなら、左の後頸部や左の胸鎖乳突筋に過緊張があるのが基本的なパターンです。
ですから、右に捻じって動きが悪いなら、左の筋肉を解せばいいと考えるのですが、ここが難しいかもしれません。
理由は、右に捻じりにくくても、右の筋肉に異常ある場合があるからです。
それは何故かと言うと、頸椎や頚椎と繋がる筋肉の問題だと考えています。
もう一度上のイラストを見てください。
第2頚椎と下頭斜筋・大後頭直筋が繋がり、下斜角筋は第1頚椎を介して後頭骨に繋がっています。
そして、小後頭直筋は環椎と後頭骨と繋がっています。
つまり、簡単に考えても、それらの4つの筋肉が絡んでいますので、この4つの筋肉のアンバランスを調整してあげる必要があるわけです。
頭蓋矯正に慣れている方なら、これらの筋肉を整えるだけで、頭蓋骨の一部の歪みが矯正されたのがわかるはずです。
逆に説明すると、これらの筋肉を調整せずに頭蓋骨を調整しても、戻りやすいということになります。
参考のために、後頭部の筋肉の起始・停止・機能を書いておきます。
大後頭直筋
起始:C2(軸椎)の棘突起に付着。停止:後頭骨の下項線付近に付着。
機能:様々な姿勢をした時に、目線を水平に保つために、調整をする部分です。この部位は、椎骨動脈や頚動脈といった、脳への血液循環を左右する複雑な部位でもあります。
小後頭直筋
起始:C1(環椎)の後結節に付着。停止:後頭骨の下項線の内側に付着。
機能:この筋肉は、様々な姿勢をした時に、目線を水平に保つために、調整をする部分です。頚椎の1.2番は、その意味でも大切な部位です。また、この部位は、椎骨動脈や頚動脈といった、脳への血液循環を左右する複雑な部位でもあります。
上頭斜筋
起始:C1(環椎)の横突起に付着。 停止:後頭骨の下項線の外方に付着。
機能:後部の後頭下筋群の一つで、環椎を固定した時に後頭骨を回旋します。様々な姿勢をした時に、目線を水平に保つために調整をする部分です。この部位は、椎骨動脈や頚動脈といった、脳への血液循環を左右する複雑な部位でもあります。
下頭斜筋
起始:C2(軸椎)の棘突起に付着。停止:C1(環椎)の横突起に付着。
機能:後部の後頭下筋群の一つで、軸椎を固定した時に、環椎を回旋または伸展します。ここの筋肉は、様々な姿勢をした時に、目線を水平に保つために、調整をする部分です。頚椎の1、2番は、その意味でも大切な部位です。また、この部位は、椎骨動脈や頚動脈といった、脳への血液循環を左右する複雑な部位でもあります。