「君は雨を見ているの 雨を見てるふりだけなの」「それとも今日から日記をやめると書いているのかな」という、不思議な歌詞や言葉遊びが詰まった名曲。
失恋した女性を雨の日に慰めているというストーリー性があり、しっとりとしていながら将来への希望を抱かせてくれる。僕自身、神経症になっていた中学生の時にこの曲に出会い、随分と励まされたものだ。特に「あしたが天気になると、今日の事が想い出のひとつになり…」というフレーズには聞くたびにほろりとさせられたもの。
…それから40年。ツラかった中学時代がようやく「想い出のひとつ」になったところ。
日本列島が南から梅雨となるこの時期、しんみりと耳を傾けるのにはいい曲なのです。傘を差して雨の中を歩くテンポにも、丁度いいはず。
この曲が収められたアルバム『氷の世界』には、他にも「チエちゃん」や「桜三月散歩道」「おやすみ」など、いい曲が目白押し。特に冒頭の「あかずの踏切り」~「はじまり」~「帰れない二人」のつながりは、あのビートルズの『アビーロード』にも似た心地よさがある。
この文章も『氷の世界』聞きながら書いている。これ読んでいる皆さんにもおそらく、それぞれの〈心の歌〉があるに違いない。