思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ナショナリズム宣言=安倍官房長官の「美しい国へ」(文春新書)への批判の輪を広げていこう!

2006-08-29 | 社会思想

安倍晋三の思想は分かりよいものです。
「美しい国へ」(文春新書)に書かれている彼の思想は、思考の訓練を受けていない人独特の「わかりよい独断」で貫かれています。
人間の歴史―精神史への驚くべき無知が、狭い自己の信念を不動のものにして、「ぶれのなさ」を支えているのですが、その薄っぺらさとソフトにして頑固な態度の同居が人気の秘密でしょう。

「日本古来の神道」とその思想を大きく変えた明治政府作成の「靖国=国家神道」を同じものとして論じることで、恐ろしく偏ったイデオロギーを正当化する。しかもそれをレーガンやブッシュの力・軍事力による政治こそ正しい(レーガンは悪の帝国・ソビエトを崩壊させた)=「力の行使をけっして畏れてはならない、ヨーロッパはその力の蓄積を怠ったゆえにアメリカに頼るしかなくなったのだ」(ネオコンの論客・ロバート・ケーガン)として、戦前の軍国日本のなし崩し的な正当化ーその時代のことはその時代の目線でみなければいけないーにつなげるという凄まじい裏技を披露します。

「日本の国柄をあらわす根幹が天皇制である・・一つの家系が千年以上にわたって続いてきたのは奇跡的」と言い、その後で、
「特攻隊員たちは、自分の命を永遠のものにする意志があった」ー大儀に殉じること=日本という国の悠久の歴史に。「私たちはときには自分の命をなげうっても守る価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるのだろうか」と書く。
これでは、戦前の「国体思想」と同じです。

その思想に基づいて「教育改革」に取り組む、と宣言されています。「お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあさんも含めてみんな家族だ」「そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだという価値観は守り続けていくべきだ」、「理想の家族のかたち、しっかりとした家族モデルを示すのは、教育の使命」とし、
現在の教科書には、「多様な家族のかたちがあっていい」と説明されているーこれはよくないので変えていく、と書かれています。
一人ひとりの生活のあり方を政治権力で規制するのが「美しい国」というのは、政治家にあるまじき公私混同ですが、彼はこれをサッチャー(英)やレーガン(米)に倣って断固として行うと宣言しています。

(続く)

武田康弘


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