27日(日)の朝日新聞での中曽根康弘元首相の発言(国家主義)を批判して行こう!というメールが友人の*山脇直司さんから来ましたので、朝日を取りよせて読みました。朝日の前論説主幹・若宮啓文さんの質問に応える記事で、7面の全部を使ってのものです。
一読、わざわざ批判するのも愚かなほどの内容だと思いました。「日本とアメリカとの共同の価値観は、人道と民主主義で、それは、明治天皇が作られた五箇条の御誓文からも発生している、」という主張は、ほとんどマンガでしかありません。
言うまでもなく、大日本帝国憲法(明治憲法)は、主権者である明治天皇から国民に与えられた【欽定憲法】なのであり、人民主権を基本原理とする【民主主義】とは、原理からして異なるものです。
近代の立憲主義における憲法(主権者が代行者である為政者に課する憲法)と、それ以前の国家が国民に上から与える「憲法」(支配者としての国王が臣民に与える恩寵)とは、言葉は同じでもまったくその意味が異なるわけであり、これは日本の義務教育(「公民」)で勉強するものです。
このような基本レベルで間違っているようでは、哲学(=原理的思考)としては、全く失格であり、論評以前ですが、中曽根さんは、戦前の教育(天皇現人神)を幼い頃に叩き込まれたわけですから、同情すべきかもしれません。「教育」とは怖いものですが、この発言を問題にしない朝日新聞の元・論説主幹にも呆れました。若宮さんは戦後教育のはずなのに~です。
それにしてもこのような思想の持ち主が、哲人を気取る、というのでは、哲学が泣きますね。
(*山脇直司さんは、「公共哲学」運動を進める東京大学教授で、国連・ユネスコ
「哲学会議」のメンバーです)
武田康弘