思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

美のイデアの追求ー『セザンヌ主義』展(横浜美術館)

2008-12-01 | 日記
昨日午後、「セザンヌ主義」と題する『横浜美術館』の展覧会に行ってきました。

表層の美しさには目もくれず、対象とそれを見る自身の意識と対峙して「美のイデア」に迫ろうとしたセザンヌの絵画は、西洋美術の偉大な一頂点だと言えますが、彼を父だと言うピカソをはじめ多くのセザンヌ礼賛者たちーマティスやブラック、ベルナールやドニなどと、セザンヌに心酔した『白樺派』美術運動の担い手たちー有島生馬、岸田劉生、小野竹喬、森田恒友、佐伯祐三らや安井曾太郎らの作品を並べて展示した今回の催しは、大変面白いものでした(当然ですが、『白樺教育館』のシンボル=南薫造の絵が載った『白樺』第3巻も紹介されていましたー柳宗悦「革命の画家たち」)。

セザンヌの色彩は、追随者たちのものとは大きく異なることが分かります。地味なのに多色で美しいのです。しかも透明で繊細微妙なことには驚愕するほかありません。単純化が豊饒化につながり、強烈なエネルギーが静謐さを生むという逆説を示しています。
油絵なのに水彩のような作品、晩年の水彩画、みな、静かで柔らかくしかも揺ぎなく強い。強烈な力と品位の高さが両立し、自然物が持つような美を感じさせます。
なによりも驚くのは、絵具で塗った・描いたというのではなく、中から色が出てきたというように見えるので、描かれているものの存在が強い光を放つのです。

中学生の時に「赤いチョッキの少年」他の絵を美術書で見て感動して以来、わたしにとってセザンヌはずっと特別な画家でしたが、昨日改めてまた強烈な感動におそわれました。
「セザンヌ展」に行ったのは、1986年の『伊勢丹美術館』以来で、知らぬ間に22年が経ちました。
(☆信じられぬほど良好な保存でいま描いたばかりのような色彩の「バーンズコレクション展」(1994年)でのセザンヌは別格でしたが。)

横浜美術館の展覧会ー「セザンヌ主義」は、来年1月25日までです(木曜休館)。
※ひとつ残念なのは、図録の印刷の色彩が悪く、酷くズレていることです。


武田康弘
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