2008年に続き、今年もウィーンフィルのニューイヤーコンサートを指揮したフランスの自由人・ジョルジュ・プレートル。
元旦の衛生中継で見るプレートルは、85才という年齢がにわかには信じられない若々しい指揮ぶり。艶やかで躍動する音楽を奏で、元気いっぱい。聴衆は熱狂していました。
そのプレートルがレスピーギの三部作を指揮した映像がありますので(「プレートル」のコミュの方から紹介)お知らせします。
三部作のうち、「ローマの噴水」と「ローマの松」の二つです。
プレートルの豊かな主観性の音楽は、明晰かつ豊饒、知的にして官能的、艶やかなエロースの芸術です。ロマン主義とは無縁の真のロマンが全編に満ち溢れ、ホール全体に広がります。わたしは、あのトスカニーニの伝説的な名演を凌ぐ、最高のレスピーギだと思います。みなさんもぜひ堪能してください。2009年7月、85歳目前のプレートルです。
お時間のない方は、まずは、「ローマの松」4の5分間をどうぞ。DVDが出ないかな~。
ローマの噴水 ローマの噴水2
ローマの松1 ローマの松2 ローマの松3 ローマの松4
わたしの【プレートル賛】は、1年前の文章がありますので、貼り付けます。
「職人技に支えられた豊饒な主観性」
プレートルのつくる自由でこだわりのない音楽は、実に豊かです。
音楽の表情は(指揮する顔の表情も)変化に富み、飽きることがありません。
明晰にして豊饒です。
プレートルの音楽の豊かさは、アインザッツに無頓着で、各プレーヤーの自発性に任せていることに一因があると思います。
また、テンポも、プレートルの心身に忠実に刻まれているようで、聴いていて心地よいものです。ただし、楽譜の指定とはかなり異なることもあるようですが。
何より素晴らしいのは、音楽学的な窮屈な感じが全くなく、楽曲の意味が判然と伝わることです。全体がわしづかみにされて、明瞭に示されるので、とても分かりよいのです。
プレートルは、内外(フランスとオーストリア)で大きな音楽賞を受賞していますので、「異端」ではないはずですが、彼のつくる音楽は、ベートーヴェンやマーラーの交響曲においても、従来の演奏とは様相が大きく異なります。意味が濃く、表情がとても豊かで、分明かつパワフル。楽しいのです。楽譜に書かれた音楽が「客観」として示されるのではなく、プレートルという人間の「主観性」のエロースに満ちているので、面白く、長大な交響曲も繰り返し聴きたくなるのです。彼の主観性の豊かさ・魅力は、長年、オペラの指揮で身につけた確かな職人技に支えられているので、強く安定しています。
2008年、ニューイヤーコンサートの指揮者としてウィーンフィルの楽団員が選んだプレートルは、83歳にして突如大注目されるようになりました。昨年、録音後17年間もオクラになっていたマーラの交響曲・第5番、第6番が、『レコード芸術』誌で特選盤となり、第5番は、2008年度の「レコードアカデミー賞」・大賞も受賞しました。
従来の「客観主義」による正確・緻密な演奏とは大きく異なる「主観性」の豊かさに基づく演奏が、このように高く評価されるようになって、わたしは嬉しい限りです。
いま、時代が、更に言えば、大袈裟かも知れませんが、人類の文化・文明が大きく変わろうとしているのかもしれません。なんだか、ワクワク、ドキドキしますね~。
武田康弘