思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

『隠される原子力』(小出裕章著)『原発を考える50話』(西尾漠著)

2011-05-04 | 書評

原発に関する本を二冊読みました。

一冊は、岩波ジュニア新書『原発を考える50話』(西尾漠著)です。
この45話目の「原発は地球を救わない」は、白樺教育館(ソクラテス教室)で、4年前から小学6年生の国語教材として使ってきたものですが、
全体を読んで感じるのは、科学的知見と人間の生き方や社会問題としての「原発」が合わせてきめ細かく書かれていて、とても説得力があります。

二冊目は、『隠される原子力』(小出裕章著・創史社刊)です。
これは、ジュニア新書の半分ほどの分量で読みやすいですが、ストレートに本質に切り込み、二酸化炭素問題の「常識」のウソについても明晰に批判をしています。さすがに優れた研究者です。


(ただし、自衛隊を廃止するのが憲法理念だとするのには、わたしは賛同できません。戦争を放棄する旨の憲法をもっている国は幾つもありますが(文春新書『日本国憲法を考える』西修著を参照)、自衛のための軍事力までは否定していません。)

この二冊、とてもお薦めです。

以下は、岩波新書『原発を考える50話』より抜粋。
23「揺れる大地」(P.100~103)

「巨大地震が発生すれば、原発のさまざまな機器が同時に破損します。「何重もの安全装置」があったところで、それらの装置も、やはり破損するおそれがあります。原発の事故対策としてよくいわれる「とめる、冷やす、閉じ込める」が働かない可能性が、地震の場合には大いにあります。
 原発を緊急に停止させる制御棒がうまく入らないかもしれません。運よくとめられたとしても、燃料は放射能による高熱のため、冷しつづける必要があります。原発の運転をとめれば発電所内でつかう電気の供給がとまり、冷却装置が維持できなくなります。非常用のディーゼル発電機を動かそうにも、同時に破損していてつかえないかもしれないのです。
 原発で燃やしたあとの使用済み燃料は、再処理工場や中間貯蔵施設に向けて運び出されるまで、原発内のプールで冷却されています。地震でプールの水が抜ければ、燃料が溶け出します。
 緊急停止に失敗して核反応が異常に進む暴走事故を起こしたり、燃料が溶けたり、タンクや配管が破裂したりして放射能が漏れ出すかもしれません。それを閉じ込めるはずの格納容器や格納容器を貫通する配管なども破損していて、環境に大量の放射能を放出するおそれがあります。
・・・・
 幸か不幸か原発は地震の静穏期につくられ、巨大地震を経験していません。・・・それがいま「日本列島はほぼ全域で大地震の活動期に入りつつある、ということはほとんどの地震学者は共通に考えている」と石橋教授は指摘しています。
・・・・
 原発は大量冷却水と広い敷地を必要とするため、海岸地帯のきわめて地盤の弱いところにしか建てられないのです。地盤が悪ければ、地震のときの揺れは大きくなります。また、地震断層ができやすいという大問題もあります。地震断層が直下でできれば、どんなに頑丈に原発をつくっても、ひとたまりもないでしょう。
 そこで、電力会社などが、原発を建てるために、地盤データをごまかしたり、都合の悪いデータを隠したりすることになります。



コメント (2)
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