民主的倫理の現実的な基盤は、お金を払うことです。
民主的倫理においては、先に述べたように、「個人と個人の関係」「個人と個人の約束」が最も価値の高いものです。
それを現実的・実際的に言うと、知り合い、友人、恋人、師弟・・などの近しい関係にある場合でも、仕事・サービスを依頼したのならば、その対価を支払うことです。
相手に甘えて、自分から依頼したサービスや仕事に対してもお金を払わないことは、よい人間関係(=対等で深く豊かな人間の関係)を育てず、一方通行の貧しい人間関係しか生みません。
個人間では、感情的には甘えることは許されますが、倫理次元(独立した人間同士の関係性)においては、甘えることは許されません。民主的な倫理意識をもって生きることは何よりも大切ですが、それを現実のものとするのは、支払うことなのです。
なぜならば、個人と個人の関係の中では、どこからお金がくることはなく、さまざまな費用(時間・労力・種々の維持費など)は、すべて個人が負担する他ないからです。支払われなければ、仕事・サービスを提供する側は、一方的な負担を強いられてしまいますが、それでは、人間のよい関係性(民主的倫理)は、育ちません。互いに助け合い、互いに広義の利益を得ることができるように努力し合うのが、楽しく、悦びの多い人生を拓くキーなのですから。
武田康弘