当日に感動の演奏評を出しましたが(ノット・東響 ブルックナー交響曲8番 横須賀芸術劇場 解放感あふれる見事な演奏。)、それでは足りないので(笑)再度、賛辞です。
7月17日の横須賀芸術劇場(前日はサントリーホール)でのブルックナー交響曲8番。
わたしは、こんなに面白くかつ感動するブルックナーの演奏は聴いたことがありません。
比較にいま、21世紀初頭のギュンター・ヴァント・ベルリンフィルの3楽章・4楽章を流していますが、まったく面白味のない演奏です。緻密で正確ですが、まるで「お勉強」のクラシックです。神経質でせせこましく愉悦感がありません。
ジョナサン・ノット・東響の演奏は、はるかに豊かな音楽で、エロースに溢れ、自由で自発に富み、まさに演奏芸術!の醍醐味でした。
マタチッチ・N響の野暮さがなく、オケも東響の方が上手いですし、音楽の解釈が普遍的で、かつてのカラヤンのように自分の美学に従わせるのとは逆に「民主的」で洗練されています。ほんとうの意味で頭のよさを感じさせ、とても魅力的です。
また、チェリビダッケの荘厳な宗教儀礼のような一面的な音楽ではなく、多色で多面的ですが、全体はみごとに一つです。とても現代的で美しい演奏ですが、偏りがありません。
あえていえば、面白味ではヨッフム(より知的ですが)のようであり、8番の歴史的名演として知られるクナッパーツブッシュ・ミュンヘンフィルを現代的で都会的にしたような演奏ですが、色気があり、ずっと魅力的でした。すごい演奏会に一聴衆として参加でき、ただ感動!
これからノットさんは、21世紀にふさわしい新しいクラシックの金字塔を次々と打ち立てそうな予感がします。ドキドキです。契約延長で10年間も東響で聴けるのはとても幸せですし、秋の欧州演奏旅行ではウイーン学友教会でも演奏会がありますので、ウィーンの聴衆の反応が見ものです。
直前には欧州プログラムでの演奏会もありますが、う~~ん、ノットさんの選曲のよさに改めて脱帽します。
欧州プレコンサート(1)は、10月9日(日)東京オペラシティで、
武満徹・弦楽のためのレクイエム ドビュッシー・海 ブラームス交響曲1番。
欧州プレコンサート(2)は、10月15日(土)サントリーホールで、
ベートーヴェンヴァイオリン協奏曲 ショスタコーヴィチ交響曲10番。
(ヴァイオリンはイザベル・ファウスト)
武田康弘