アリスちゃんに降り注ぐトランプではなく、何かとわたくし
学者に限らないが、「もうだめだ!」と周りに思わせる人間の特徴としてあげられるのは、
1、お世辞を言うと本気で自慢を始める
2、言い訳が他人の批判へ、あるいは自慢に転じて行く
3、昔話(ほぼ作り話)が止まらない
4、笑い声で自分の存在を示す
5、正しい主張が愚痴にしか聞こえない
6、どこそこの名産物に詳しい
……
などがあると思うが、加えて「卒業文集などで箴言を書きたがる」というのがあると思う。これだったら、20代ぐらいからいるのではなかろうか。私は、なぜかかる箴言好きが馬鹿に見えるのか常々疑問であった。
で、最近、上の本がコンビニエンスストアに置いてあった。題名がなかなかよかったので、つい買ってしまったのだが、中身をもっとちゃんと見るべきであった。古今東西の箴言が延々続き、最後に「一人で悩まないで!悩み事別相談窓口List」とあって相談窓口の電話番号とかが書いてあるのだ。このページを先にしてくれよ(笑)箴言じゃ人は救われませんよ。
というのは、特に日本の箴言というのが、ただ逆説風にもっともらしいだけで、「本当かよ?」というのが多いからである。最近、日本人が危機に際して、危機を見ないように殊更努力することによって乗り越えて行く傾向があるのが、そこここで確認されてるが、箴言レベルでもそうなのではなかろうか。例えば次のようなものは箴言として優れていると言えるであろうか。
「あまり人生を重く見ず、捨て身になって何事も一心になすべし」(福沢諭吉)←それはやけくそというのではなかろうか?特攻か?
一匹の人間が持つてゐる丈の精力を一事に傾注すると、実際不可能な事はなくなるかも知れない。(森鷗外)←違います。不可能は沢山あります。
自覚さえすればどんな生活にだって深い意味が出来る(永井荷風)←確かにね、深すぎて真っ暗な場合があるけどな
人生のどんな隅にも、どんなつまらなそうな境遇にも、やっぱり望みはあるものだ(菊池寛)←自殺志願者にそういってみろよ
旅じゃありませんか、誰だって人間の生涯は(島崎藤村)←最初と最後で一人じゃ歩けないような旅でもいいのか?
何もしないさきから、僕は駄目だと決めてしまうのは、それあ怠惰だ(太宰治)←お前は駄目だ
私を傷つけるものは、私自身である(ベルナール)←リストカッターですかっ
握ったこぶしを開けば、怒りも消える(シャルティエ)←平手打ちはどうするのだ
社交の秘訣は、真実を語らないということではない。 真実を語ることによってさえも、 相手を怒らせないようにする技術である(萩原朔太郎)←お前が一番出来なかったことじゃねえか
けがを恐れる人は大工にはなれない。失敗をこわがる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸しがいの山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園である。(寺田寅彦)←死んじゃまずいだろ、死んじゃ
己れの立てるところを深く掘れ。そこには必ず泉あらん。(高山樗牛)←嘘を言うな、嘘を。殆どの場所では永遠に泉なんかでねえよ。
楽しきと思うが楽しき基なり(松平定信)←洗脳はそうやってやるんだよな
黙ってこらえているのが一番苦しい。盛んにうめき、盛んに叫び、盛んに泣くと少し苦痛が減ずる(正岡子規)←病気の場合は絶対に無理
急いでも仕方がないから、寝ころんで待つが第一サ(勝海舟)←すみません、ちょっと起きてくれませんか
陰極まって陽生ず(醒睡笑)←陰はどこまでいっても陰ですが?
疲れちょると思案がどうしても滅入る。 よう寝足ると猛然と自信がわく(
君たちは きっと 強くなる。 笑われて笑われて強くなる。 (太宰治)←確かにね、そんときゃ人間がロストしてるけどな
雨にも負けず、風にも負けず(宮沢賢治)←ど、どうやったら勝てるんでしょう……
人間よりは金のほうがはるかに頼りになりますよ。頼りにならんのは人の心です。(尾崎紅葉)←金と結婚してなさい
人が踊る時は一緒に踊れ(ドイツのことわざ)←はいはいファシズムファシズム
結婚の利益は、女性の本質を知ることであり、結婚の損失は、女性への幻滅を知ることである(萩原朔太郎)←どんまい
……なぐさめにならんことばかり勝手に言いおってからに。もっといい言葉はないのか。箴言好きが馬鹿に見える理由は、上のようなレベルの認識を真だと思ってしまうそもそもの頭の悪さがあったのであった。納得である。